「近年、がんと食べ物に関する研究が進んだことで、がんの発症リスクが上がる食材、つまり、“がんになりやすくなる食材”が徐々にわかってきました」というのは帝京大学福岡医療技術学部教授で、がん専門医の佐藤典宏先生だ。
特に気をつけたいのは毎日のように口にするもの。今回は料理のときに多くの人が使う調理用の油や肉や魚の脂について佐藤先生に話を聞いた。
じつは要注意な“健康オイル”
まずは調理油のなかでもっとも一般的なサラダ油。原料に大豆油が多く使われているものが主流で、大豆油にはリノール酸という脂肪酸が多く含まれているのだが、“がんリスク”はこの「脂肪酸」が鍵を握っているという。
「リノール酸はオメガ6脂肪酸というタイプの脂肪酸ですが、これは要注意。がん細胞を増殖させる作用があることが報告されています。約3万8000人の女性を対象にした国立がん研究センターの調査では、この脂肪酸の摂取量が多いほど、ホルモン依存性の乳がんリスクが高くなりやすく、摂取量が最も少ないグループに比べて多いグループは乳がんリスクが2.94倍高かったと報告されました」(佐藤先生、以下同)
オメガ6脂肪酸がなぜがんの発症リスクを上げるのかについては、詳しいことはまだわかっていないが、冷凍食品やコンビニ食品、ファストフードなどは比較的安価なサラダ油が多く使われていることもあり、私たち現代人の食生活はオメガ6脂肪酸の摂取が多くなりがち。そのことが関係しているのではと考えられているという。
乳がんは日本人女性が一番なりやすいがんだ。気をつけるに越したことはないが、スーパーの油の棚には「ヘルシー」と書かれた商品も数多くある。「ヘルシー」と書いてある油なら安心だろうか。
「商品名が『ヘルシー〇〇』となっていても、主な原材料が大豆油の場合もあります。ボトルの裏の原材料表記を確認するのをおすすめします」
原材料表記は、その商品に多く使用したものから順番に書くルールになっているので、一番最初に書かれているのが大豆油なら、オメガ6脂肪酸が多いということ。健康のためにヘルシーな油を選んでおきながら、がんリスクが上がったのでは本末転倒だ。最近は油の値段が高いので、よけいに気をつけたい。
また、サラダのドレッシングに使うと風味がいいため、健康志向の人に人気の高い油にグレープシードオイルがあるが、これはオメガ6脂肪酸であるリノール酸が特に多く含まれている。要注意だ。
では、がんのことを考えた場合は、どんな油がいいのだろう。