和食なら「なたね油」か「べにばな油」

「体にいい油といえば、みなさんご存じのオリーブオイルがあります。オリーブオイルは古来からの健康食として知られる地中海食によく使われている油で、健康効果は多岐にわたります」

 オリーブオイルに豊富に含まれるオレイン酸はオメガ9脂肪酸で、悪玉コレステロールを抑え、大腸がんの成長を遅らせる効果がある。また、スペインの研究では乳がんのリスクが68%低下したり、イギリスからは膵臓がんのリスクが71%低かったという報告も。

調理油と“がん発症リスク”(がん専門医・佐藤典宏先生監修)
調理油と“がん発症リスク”(がん専門医・佐藤典宏先生監修)
【写真】がんリスクを上げる油&下げる油の一覧表

がんの発症リスクを考えるなら、オリーブオイルがおすすめです。実際、私もオリーブオイルを料理によく使っています。ただ、和食の場合は風味が合わないこともあるので、その場合は同じくオレイン酸を多く含むなたね油やべにばな油を使うのがいいと思います」

 スーパーでよく見る「キャノーラ油」はなたね油の一種。サラダ油の次に手頃な金額で売っていることが多いので、油にこだわりがないならキャノーラ油もいいだろう。

 なお、ごま油や米油は、がんリスクを上げるリノール酸と、下げるオレイン酸の両方が含まれている。一度がんを経験しているなど、がんの発症リスクを少しでも低くしたい人は、毎日使うのは避けたほうがいいかもしれない。

 また、健康オイルとして有名なアマニ油やえごま油はオメガ3脂肪酸というタイプ。がんの原因や進行の要因になる炎症を抑える働きがあり、がんリスクの低下に効果的だが、えごま油やアマニ油は風味に癖があるのと、加熱すると効果が抑えられてしまうのが難点。料理に手軽に使うなら、やはり、オリーブオイルかなたね油、キャノーラ油、べにばな油がいいだろう。

 ちなみにオメガ3脂肪酸は魚にも含まれていて、青魚を中心に、まぐろのトロやホッケ、ぶりなど、脂ののった魚に多い。一方、肉の脂はオメガ3脂肪酸ではなく飽和脂肪酸というタイプの脂なのだが、こちらは逆にがんのリスクを高めてしまう。

「フランスにおける約4万4000人を対象とした研究によると、飽和脂肪酸の摂取はすべてのがんのリスクを44%高め、乳がんに限るとなんと98%高めるという結果が出ています。もっとも注意したい脂肪酸なので、飽和脂肪酸が多いバターやラード、肉類でいうと豚バラ肉や牛カルビ、鶏肉の皮などは食べすぎ注意です。じゅわ〜という肉の脂はおいしいけど要注意、と考えてください」

 食事は365日、毎日の習慣。調理油選びや食材選びなど、少し意識するだけでがんのリスクは変わる。摂りすぎ注意な油や食材とは上手につきあっていきたい。

佐藤典宏先生●がん専門医。九州大学医学部卒、帝京大学福岡医療技術学部教授。著書に、がんのリスクを下げてくれる“抗がん食材”を使ったレシピ集『がんにも勝てる長生きスープ』、『がんにも勝てる長生き常備菜』(主婦と生活社)がある。

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