笑顔で生きるのが夫への恩返し

川村さんは夫の死を受け入れつつも、今なおさみしさや悲しみはあり、それがなくなることはないと語る。ただ、あるときから前を向いて生きていこうと決めた。
「亡き夫を思うとき、夫も空から同じように私のことを思ってくれているに違いないと思うようになりました。それなら、私が悲しんでいるより元気に過ごしていたほうが喜ぶだろうからいつまでも泣いてばかりじゃいけないと。ひとりになっても笑顔で楽しい生活を送ることが、夫への恩返しになると考えるようになったんです」
残された人の心のケアが必要だと身をもって知った川村さんは、エッセイや講演会で家族亡きあとの悲しみの乗り越え方などについて、多くの人に伝える活動を始めた。
講演会などでは「後悔しない看取り」について聞かれることも多いが、正解はないと言う。
「親への看取りに関しては、元気なうちからとにかく会いに行く回数を増やしてあげることだと思います。夫の看取りは、できるだけ一緒に過ごす時間を確保すること。入院などされている場合、毎日病院や施設に通うのは大変ですが、それでもあの時こうしてあげていれば……という後悔は減らせます」
孤立は避けて孤独を楽しむ!
川村さんは孤独を楽しむことを“楽独”と呼び、ひとりの生活を謳歌している。
「孤立は人や世間とのつながりを断っている状態で、孤独死を招くおそれがあります。一方で楽独は、信頼できる友人、趣味や仕事仲間などがいる状態で、自分のためのごはん作りやひとり時間などを目いっぱい楽しむこと。ただ、ひとりになってから急に社会と関わりを持とうとしてもむずかしいので、家族がいるうちから楽独の準備を始めるのがおすすめです」
趣味のサークルやボランティア活動は共通の目的があるので、気の合う友人がつくりやすいそう。また、専業主婦の人は夫亡きあと年金のみで暮らしていくのは心もとないというのもあり、週に1、2日のパートやアルバイトなどを夫がいるうちから始めておくのがおすすめと川村さん。給料をもらいながら、社会とのつながりを保てるので、いざというときに心の支えになるのだという。
「働いていると、少なくともその間は悲しんでいる暇はありませんから。とにかく、身近な人を亡くした直後は、ご友人と会うことでも趣味でも何でもいいので外に出て、忙しくすることが悲しみを乗り越える近道だと思います」
また、楽独を楽しむためには身体が資本。医師である川村さんのモットーは「快眠・快食・快便」とシンプルだ。
「睡眠時間は5~6時間はとるようにしています。さみしくて眠れないときに友人にすすめられて韓国ドラマを見始めたのですが、すっかりハマって今ではドラマを見ながら寝落ちしています(笑)。どうしても眠れないときは、かかりつけ医や薬剤師に相談しながら睡眠薬に頼っても。私も父が亡くなったときは不眠症になり、一時的に服用していました」
快食と快便のためには、自炊をしつつ、ちょっとした心がけを続けるのが大事。
「“腹八分目”と“寝る4時間前までに食べ終わること”を実践しています。すると、体内のサイクルが整いやすく、毎日3食きちんと食べる習慣が身につき、身体の調子もよくなります。快便のためには、ヨーグルトや牛乳、サプリなどから乳酸菌をとるように。腸内環境の改善が全身の健康につながりますから」