山川さんにとっても、家族、とりわけご両親の存在は大きかった。
「私からみる母の姿は、いつも前向きで強い人でした。私が弱気になった時も“きよかなら大丈夫”と信じて背中を押してくれて、言葉だけでなく行動でも、困難に立ち向かう姿を見せてくれました。自分が辛いとき、母の励ましを思い出して“これでいいんや”って思える。それは、病気や障害を持つ人に限らず、誰にとっても大事なことじゃないかと思うんです」
山川さんは両親のことを「月と太陽のような存在」と表現する。
「母は私にパワーを与えてくれる太陽の存在だとすると、父は優しく見守る月の役割。そんな両親の絶妙なバランスが私を成長をさせてくれたのだと思います。とても大切で頼れる存在です」
何度も繰り返された入院や手術のなかで、ご両親が示してくれた“変わらない愛情”が、山川さんの心の奥深くを支えていた。
「マイナスな気持ちになっている時も、「プラス! プラス!」と常に私に声をかける母がいたおかげで、私は安心していられたし、今こうして発信することにもつながっています。本当に感謝しかないです」
違いを尊重し合える社会へ
ふたりが外見に症状がある当事者として発信を続けるのは、「同じように悩む人がいることを知ってほしいから」だと口を揃える。
「どんな人でもコンプレックスを抱えているし、それは決して“贅沢な悩み”ではない。お互いの悩みや背景を尊重し合える社会になってほしいと思っています」(山川さん)
「私たちの発信を通じて、誰かが自分を少しでも好きになれるようになったらうれしい。そして、周囲の人にも“そういう違いがあるんだ”って自然に受け入れてもらえるような世の中に変わっていけばいいなと思います」(小林さん)
小林さんは現在、口唇口蓋裂の当事者、親族などの相互交流を目的とする『笑みだち会』の代表理事をしている。情報共有や支援活動やセミナー等の情報発信を行い疾患の認知を広げる。
山川さんは公務員として働きながら、障害を持つメンバーも交えた地元の音楽グループ「ミュージックパレット」の演奏会等で、自らの体験や想いを語っている。『大丈夫、私を生きる。』(集英社)を上梓。外見を理由とする差別や、偏見のない社会への貢献する、彼女たちの活動を見守りたい。