世界的ヒットアニメ『もののけ姫』の主題歌を歌い一世を風靡し、瞬く間に国民的歌手となった米良美一さん。
親しみやすい人柄でバラエティー番組にも出演し、世代を超えた人気を集めていた。そんな米良さんを、突然の病魔が襲ったのが昨年12月。くも膜下出血で倒れて緊急入院し、一時は生死をさまようほどの危険な状態に陥った。
「倒れたときのことは、まったく覚えていないんです。手術後もしばらくはボーッとしていて、自分が倒れたことをはっきり認識したのは1か月後くらい。周りの人に“くも膜下出血で倒れたんだよ”と言われて、ああ、やっぱりって……」
しかし、その後は奇跡的な回復を遂げ、今月6日には273日ぶりにステージに復帰した。働き盛りの40代、いきなり倒れてしまい、悔しさや焦りが先に立ってもおかしくない状況なのに、米良さんはこう言って微笑む。
「僕は祖母をはじめ親戚何人かをくも膜下出血で亡くしているんですね。だから、まずは助かっていることがとてもありがたいなあと思いました。とはいえ、僕は決して人間ができているほうじゃなくて、どちらかというとジタバタするタイプだし、すごく後ろ向きな部分もある。
だけど今回に関しては、今までの経験があるからなのか、意外と静かに受け入れることができたんです。こういった病気も、さらに僕が今後、脱皮していくにあたっての、ひとつのプロセスなのかもしれないと。これがマイナスなら、また正反対のいいことが起きるだろうと。病気の経験もつらいだけじゃなくて、この先の経験値になると思うんです」
この経験を今後の仕事に生かしたい。そんな心持ちになったために、療養中は早く復帰したくてうずうずしていたという。
「ただ病気には悔やみはしませんでしたが、お仕事で関わっている方たちに、今回倒れたことですごく迷惑をおかけしてしまったことは本当に申し訳ないなあと思っていました。それでもエールをいただいたり、こうやって、私のことを忘れないでいて、取材に来てくださる方々もいる。ほんと、幸せですよ。病気になったのに」
その人柄ゆえ、芸能界に友人が多い米良さん。療養中は、芸能人仲間から励ましの言葉をたくさんもらったという。
「メールやお手紙を何度もくださったり、素敵なお花を送ってくださったりと、とても励みになりました」
そういった仕事仲間や家族はもちろんのこと、片時も忘れなかったのが「自分という存在を楽しんでくれてきたファンや一般視聴者の方々がいる」ということだった。
「だから私は、これから、大変な経験をしたからといって、お涙ちょうだい的に重くなるんじゃなく、逆に“あれ、そんなことまでしていいの?”と思われるくらいに軽くなっていきたいんですね。
みなさんに私を、もっと面白がってもらいたい。そして、そうやって軽くなったことが、今後の自分の歌や人生によい感じに生かせればいいなと、病室のベッドの上にいたころから考えていました」
確かに、米良さんを語るのには、今やバラエティー番組は欠かせない要素のひとつ。驚くようなコスプレや、面白いトークで私たち視聴者を楽しませてくれていた。
「ダウンタウンさんの番組で金太郎の格好をしたりとか、とても楽しかったですね。でも、あれはずいぶんと勇気のいる第一歩でした。さすがに今までのファンの方に見捨てられるんじゃないかしら、とか(笑い)。
ほかにもSMAPさんやとんねるずさんの番組で、素の自分を出させていただきました。さすがにもうファンの方も大丈夫になったというか、慣れてくださって。行くところまで行っちゃったという感じではありますね(笑い)」