20160301_kaigo_graf1

 多くの犠牲を払い、身を粉にして両親や義父母などを看続けても、貢献度に見合った財産分与が行われることはまれ。介護を手伝わなかったきょうだい・親戚とモメにモメた結果、介護者が涙をのむケースが多いという。なぜか? どうしたらトラブルを防げるのだろうか?

「半身不随の父をパートをしながら実家で介護。亡くなった後、介護をしなかったきょうだいが財産を平等に相続することを主張し、一緒に住んで金銭的に得したと疑われました」(50代パート・女性)

「何もしないで楽をする人間と、自由がなく過酷な介護を担う人間が同じ相続では、とても不公平」(50代無職・女性)

「現行の法律では、親の介護はして当たり前とみなされ遺産は均等分割。介護への貢献が評価されない。やらない者勝ち、正直者がバカを見る世の中だ」(60代パート・女性)

 いつ終わるともわからない介護生活、そして父母や義父母を見送った直後、新たに降りかかる厄介な「相続問題」。

 生前は介護にわれ関せずであった兄弟姉妹が、親の残した土地や貯金通帳の残高に興味を示し、自分たちの取り分を声高に主張し始める。

 相続・不動産関連のエキスパートがそろうフジ総合グループが実施した「相続に関するアンケート調査」では、「介護を行った人が相続財産を多めに取得すべきと考えますか?」という質問に、257人のうち約7割が「多めに取得すべき」と回答している。

 同様の質問を、『週刊女性』読者にも投げかけてみた。「多めにもらうべき」「多少は多めにもらうべき」という意見が約8割を占めた。

 一方、「現実として介護の貢献度に応じた財産分与が受けられると思いますか?」という問いには「受けられる」「やや受けられる」と答えた人は約4.5割にとどまった。「介護&相続問題」の体験者からは、冒頭のような苦い心境が寄せられた。

 介護をした人間と介護をしなかった人間の埋めようのない溝。それは徐々に深さを増し、あっという間に泥沼化し、やがてむき出しの“感情戦”に突入する。身内だけではもはや、収拾のメドが立たない。

 介護・福祉系法律事務所『おかげさま』代表の外岡潤弁護士は、「介護による相続トラブルは増えています」と実感を口にしたうえで、こうばっさり。

「私は『終活セミナー』で、介護がゴールを迎えるのはいつ? と尋ねます。みなさん“被介護者が亡くなった時”と答えますが、実はそれが大間違いです」

 さらにこう続ける。

「被介護者の相続が完了した時が、本当の終わりなのです」

 子どものころは一緒に遊び暮らした兄弟姉妹でも親元から離れ大人になり、それぞれの家庭を築けば、考え方も懐具合もそれぞれ。

「親が信じていた兄弟姉妹の絆が、たやすく壊れることも多いのです」(外岡弁護士)