本を語り合えば親友になれる!?
本を語るうちに、人生観や仕事観など自身の内面を深く掘り下げるような話題へ移りゆくこともしばしば。普段は見られないおふたりの素顔や本音がのぞけるのも、ファンにはうれしい。
平松 本について話していると、必ずその人ならではの生き方や人格が色濃く立ち上がりますね。
小川 最初は“この主人公は”と話していたのに、気づくと“私は”が主語になって、自分をさらけ出している。本にはそんな作用があるのかもしれません。だから一緒に買い物に行くとつまらない相手でも、本の話をすれば親友になれるかもしれない(笑い)。
平松 そうですね、人と通じ合う回路のひとつに、本があってもいい。
小川 それに本の場合は、自分が相手と違う感想を述べても、“そういう感じ方もあるのか”と受け止めてもらえる。少なくとも、“あなたの意見は間違っている!”と全否定される恐れはない。
平松 確かに。本って、包容力のある存在ですよね。
“活字離れ”が言われて久しい昨今。最後に改めて、本を読む喜びとは何かをおふたりに聞いてみた。
平松 人はおのずと言葉を欲する生き物だと思うんです。小さな子が絵本を持ってきて、お母さんに“これ読んで!”とせがむ姿を見ると、いつもグッときてしまう。きっと人にとって、本を読むことは根源的な欲望なんじゃないかと思って。
小川 私は毎週1冊、本を紹介するラジオ番組をやっているのですが、中には“自分では絶対に選ばないだろう”という本が挙がってくることもあるんです。でも7年間続けてきて、“読んで損した”と思った本は1冊もない。つまらなかった本はないんです。
平松 もしつまらなくて、“読んだ時間を返せ”と思ったとしても、その感情が興味深いですよね。“なぜ自分はここまで腹が立つんだろう?”とか(笑い)。
小川 それだけの感情を呼び覚ます何かが本にはある。だから本を読むのは面白いのかもしれませんね。
あの『アンネの日記』をこんなふうに読むこともできるのか……! おふたりの会話を追っていくと、そんな発見や感動に何度も出あえて、30冊すべて読みたくなってしまうこと間違いなし。私はさっそく『みちのくの人形たち』を入手。これから読むのが楽しみ!
(取材・文/塚田有香)