■好きな力士やちゃんこ鍋をきっかけに!
本書は舞の海さんが相撲に興味を持ったきっかけ、学校の先生になることが決まっていたのに、それを蹴ってまで、なぜ力士になろうと思ったのか、そして身長が足りなかったことから頭にシリコンを入れて新弟子検査に臨んだ顚末など、相撲に学び続ける人生が書かれています。
「頭にシリコンを入れる手術をした後は、頭がクラーッとして、ずっと部屋でうめいてましたね。当時、相撲部の同級生のアパートに転がり込んでいたんですが、隣の人はいったい何事かと思ったでしょうね(笑い)」
そして、お相撲さんの1日のスケジュールや、食事の内容、給料はいくらもらっているのかなど、知られざる相撲の世界のことを知ることができます!
「相撲は結果だけではなく、内容を問われるものなんです。オリンピックなどでは金メダルを取ることが称賛されますが、横綱ともなると、立ち合いで身体をかわしたり、張り手をしたりなどしていては誰もほめたたえないんです。
横綱相撲という言葉がありますが、まずはしっかり受け止め、相手に相撲をさせたうえで勝つというのが、尊敬され、ファンに喜ばれる横綱なんです。相撲はほかのスポーツと違い、もともと神事ですから、情緒や歴史的なことなどさまざまなものが合わさっていることも含めて楽しんでもらいたいですね」
そして「相撲はお祭りに出かけるのと同じ感覚で楽しんでほしい」と舞の海さん。
「神社の中は厳かで、舞などを奉納しているけれど、周りには出店があって、みんな楽しんでいる。相撲も土俵の上は真剣勝負、でも周りは縁日のように華やかです。このギャップが面白いんですよ。
それから力士が結っている大銀杏や行司の装束、客席にお酒を運ぶ人が着ている“たっつけ袴”など、相撲には一見すると無駄に思えるようなものがたくさんあるんですが、そういうところも含めて楽しむのが醍醐味で、江戸時代にタイムスリップしたような気分にもなれるんですよ。相撲は神事、文化、芸能、興行などがひとつになっているんです。
女性の方でしたら、タイプの力士を見つけるというのもいいと思います。顔でもいいし、体形でも、相撲の取り口でもいい。“この力士かわいい”とか、ちゃんこ鍋を食べてみたいとか、まずは気軽に大相撲を見始めてもらえるといいなと思いますね」
■取材後記/著者の素顔
現役当時、元大関小錦(187センチ・275キロ)や元横綱曙(203センチ・233キロ)といった超大型力士と対戦した舞の海さん(170センチ・97キロ)は「対戦してよく生きてたなぁ、と思いますね」と笑います。今後の注目力士は? 「横綱候補は、夏場所で優勝して大関に昇進した照ノ富士と、小結の逸ノ城。2人ともモンゴル出身です。日本人だと十両の石浦とか阿炎なんかいいですね。なかなか気っ風のいい相撲を取ってますよ」。名古屋場所が楽しみですね!
(取材・文/成田 全 撮影/齋藤週造)
〈著者プロフィール〉
まいのうみ・しゅうへい ●相撲解説者・タレント。1968年、青森県生まれ。日本大学相撲部で活躍後、出羽海部屋へ入門。'90年、初土俵を踏む。最高位は小結。'99年に引退した後は大相撲解説やタレント、コメンテーター、近畿大学経営学部客員教授として活躍中。著書に『土俵の矛盾―大相撲 混沌の中の真実』『小よく大を制す! 勝負脳の磨き方』など。