「向き合わせることが学校の役目のはず」
典子さんは加害生徒8人も訴えた。
「反省し、お墓参りを約束した生徒がいた。いじめを証言すると言った生徒もいた」
だから和解した。しかし、加害生徒は学園側の証人として出廷した。いじめを否定する証言をした。
「(娘の死と)向き合わせることは加害生徒にとってもよいはず。むしろ向き合わせることが学校の役目のはず」
典子さんは、学校側の事後対応が誠実ではないことを含め、県私学振興室や県知事に対して調査委員会の設置を要望したが、実現していない。
判決確定後も、県に働きかけてきたが、「私学の自主性」を理由に動かない。文部科学省の担当課や政務官に訪問を繰り返し、問題解決の道を探ってきた。学園側にも経緯の説明や謝罪を求めたが、満足な回答は返ってこない。
「公立なら記者会見をするが、私立ならやらなくてもすんでしまう。私立の問題点をリストアップして、文科省に提出することになっているが、今はつらくて作れない」
「すべて防ぎきれるものではない」
昨年11月に名古屋市内で中学1年の男子生徒が地下鉄に飛び込み自殺した。直前、自室に遺書があり、父親が居場所を特定できた。しかし父親が現場に向かう途中、生徒は飛び込んで亡くなった。
典子さんは「衝撃的だった」と話す。周囲がSOSを受け取り、助けに向かっている途中で亡くなった点で、美桜子さんの最期に似ていたからだ。