フィリピンでの5日間の「慰霊の旅」を終えられた1月30日。その2週間前にあたる1月16日、陛下を気遣う皇后美智子さまのご苦労を解きほぐす音楽会が開かれていた。『コカリナ20周年記念コンサート 歓喜の歌』という演奏会で、年末年始に集中する宮中行事が終わった直後、フィリピン訪問への準備がお忙しい時期だった。
「コカリナが日本に誕生してから20周年のコンサートに、以前から興味を寄せている美智子さまにもご来場いただきました。
今まで被爆や震災で廃棄される木をコカリナによみがえらせてきましたが、神宮外苑の国立競技場建て替えで伐採されたケヤキをもとにつくり、美智子さまにも贈らせていただきました」
そう語ってくれたのは、コカリナを日本に紹介し、その演奏家でもある黒坂黒太郎さん(66)。
コカリナはオカリナやリコーダーに似たハンガリー生まれの笛で、美智子さまは15年以上前から演奏もされている。
この日は最後のアンコールで、“サプライズ”が待っていた─。
黒坂さんが振り返る。
「アンコールで唱歌の『故郷(ふるさと)』を演奏しましたが、美智子さまにも客席からコカリナで合奏していただきました。事前に、もしよかったら……と申し上げていましたが、4回繰り返した演奏で、2回目から最後までコカリナを吹いてくださり感激しました。
周りの人は少し驚いたようでしたが、私は指揮をしながら、美智子さまのいい音色が聴こえてくるようでした」
コカリナは小型で気軽に持ち運ぶことができる楽器なので今回、美智子さまは自分のバッグから取り出して演奏に参加されたようだ。
終演後の懇談では「子どもたちがかわいかった」と、演奏会に参加した小学生たちのことをお褒めにもなっていたという。
また、「ライフ」という70歳以上の人たちによる演奏もあり、
「戦争中の学徒出陣や、戦後の東京五輪を見守ってきた神宮外苑の木のコカリナということで、“とても意味があることです。私も演奏してみたいです”とおっしゃっていました」(黒坂さん)
美智子さまは多忙ななかでのご臨席だったが、とてもお元気そうに見えたという。
「以前よりも、顔色がよくなっているように見えました。それは、美智子さまのお好きな『樹木』『子ども』『音楽』という要素が、コカリナにはあるからだと思います」
と美智子さまの“元気の素”について黒坂さんが続ける。
「両陛下は毎年『植樹祭』に出席するように、樹木や自然に関心を寄せられています。
コカリナはそんな木という自然の素材でできていて、子どもたちも演奏することができる素朴な楽器です。
美智子さまは児童文学にも関心があり、世界の子どもたちにも心を寄せられています。長くピアノの演奏もして音楽も愛されているので、そんな内容が備わったコカリナを気に入っていただいているのだと思います」