20160329_asagakita_2

 “これからの世界、女性の柔らかな力が大切”と主張した『あさが来た』のヒロイン・あさ。そんな彼女の小気味よい活躍に励まされ、1日の始まりの背中を押された半年もいよいよ大詰めに。

「朝ドラは“日本の朝”を預かっているような気がしていまして。そこはとても責任の重いことだと思っています」

 物語を書き上げた、脚本家の大森美香さんにドラマの“舞台裏”を語ってもらいました。

 まずは“なんでどす?”と、臆せずまっすぐに思いを貫く姿が、あさなのか波瑠なのか、わからなくなるくらいにヒロインに同化した波瑠と初めて会ったときの話から。

「最終オーディションをサブルームのモニターで見ていたんですけど、面白い人だな、というのが第一印象(笑い)。あと、履歴書の文字がすごく大きく、しっかり書かれていて、“意志”を感じる字でした。

 オーディションでは、2~3週目の台本から抜粋したシーンをやっていただいたんですけど、あさがしゃべりすぎて唇を指でムニッと挟む仕草がありまして、その唇の伸びること伸びること(笑い)。あのときですね、この方だったらいいなと思ったのは」

 放送前から話題になった、あの演技も大森さんの目にとまったという。

「波瑠さんは相撲をとっても上品なんですよ(笑い)。あのお芝居を見たとき、この人なら大丈夫かもしれないと思いました」

 あさを取り巻く男性陣も魅力的だ。優しい旦那、頼れる先輩─。大森さん自身が理想とする男性像が、キャラクターに反映されている?

「きっとどこかにあるんでしょうね(笑い)。新次郎さんについてはモデルとなる(広岡)信五郎さんがいるので、“良妻賢母”の男性版というものをベースにして、あさに合う男性ならどんな人だろう、と作り上げていきました。

 実は、キャスティングが決まる前から、新次郎さんは玉木(宏)さんに演じてほしいと思って書いていたんです」

 その思いが通じてか、彼女の願いどおりに新次郎は玉木がキャスティングされた。視聴者からも熱烈に支持されているワケはここにあったのかも。大森さんはキャラクターを立ち上げるとき、演じる役者がどう話すか、など想像しながら書いていくという。

「玉木さんならどう演じるだろう、とまだ決まってもいないのに、新次郎さんに当て書きをしていました(笑い)」

 そして“五代ロス”とまで言われた五代さまの人気。演じたディーン・フジオカも注目を浴び、今や“おディーンさま”の呼び声も。

「ディーンさんが役に決まる前には、新次郎さんがソフトな方なので、どちらかというと五代さんは荒々しい“薩摩男”をイメージして書いていました。でも、ディーンさんだと、武士のちょんまげ姿のときはちょっと汚れた感じでしたけど、洋装になるとすごくおきれいで(笑い)。

 さらに、英語のセリフを増やしたり。私のイメージも、ハットを上品にかぶる、みなさんがご存じの“五代さま”になっていきましたね」

 再登場も話題になったけれど、もしかして、五代さま人気を意識したサービス?

「いえ、再登場は初めから考えていました。あさが昏睡状態になったとき、亡くなったおじいちゃん(林与一)、お義父さま(近藤正臣)、五代さまは出てほしいと。できれば3人ともに新規のシーンを書きたかったんですよ。ただ、お義父さまは大河ドラマの撮影ですし、五代さまもお忙しくなってしまったとのことで……。

 収録ずみのシーンで対応したのですが、NHKさんの方針で再登場の話題が先行してしまったために、友人から“五代さんまた出るんだって?”と何度も聞かれて、すごく申し訳ない気持ちになりました」

<プロフィール>

おおもり・みか 1972年生まれ。代表作に『ランチの女王』、『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』、映画では『カイジ 人生逆転ゲーム』『宇宙兄弟』など。朝ドラは'05年の『風のハルカ』以来、2作目の脚本担当となる。