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 51年半の歴史に幕を下ろした昼ドラを制作してきた東海テレビが“大人に向けた、本格派ドラマ”をコンセプトにしてスタートさせたのが、オトナの土ドラ『火の粉』(フジテレビ系 土曜夜11時40分~)。

「昼から夜へ。新たな時間枠に引っ越したことでキャスト、スタッフ一同“ドラマの持っている力をもう1度出したい”という気持ちが非常に強く、一致団結した現場になっています。

 けれん味(大味な演出)たっぷり、人間の感情や物語の振り幅を大きく描く“昼ドラの魂”を受け継いだ作品づくりを目指しているので、昼ドラファンの方にも、存分に楽しんでいただけると思います」(市野直親プロデューサー)

 原作はミステリー作家・雫井脩介の同名小説。物語は元裁判官の梶間(伊武雅刀)と家族が暮らす家の隣に、かつて無罪判決を下した連続殺人事件の被疑者、武内真伍(ユースケ・サンタマリア)が越してくるところから始まる。

「ユースケさんはあらかじめ計算して演じるのではなく、撮影現場で感じたことを表現されています。バラエティーでのユースケさんのイメージとギャップのある役は、見どころのひとつです」(市野プロデューサー)

 常に笑顔をたたえた武内は、梶間家にひんぱんに出入りし、手作り菓子を差し入れ、介護を手伝う。そうした好意を喜び、心を開いていく家族のなかで、雪見(優香)だけは違和感を覚えていた。

 そんな雪見の前に謎の男・池本(佐藤隆太)が現れ、“武内は無罪なんかじゃない。あなたの義父は間違いを犯した!”と言い放つ。その真意は? そして、家族の心に隙間が生まれつつある梶間家はどうなっていくのか……。

「3話(4月16日放送)では、池本が雪見に自らの正体を明かすと同時に武内の過去を話します。また、ある訪問者によって、雪見の過去の秘密が暴かれます。ハラハラするサスペンスの要素はもちろん、武内に対する雪見や梶間家の人々の心の動きなど、深みのある骨太な人間ドラマにもご注目ください」(市野プロデューサー)

 “昼ドラの魂”を生かすひとつとして、効果音にもこだわった。深夜にかかる放送で、少し眠くなってきた時間帯ならではの工夫として、ちょっと大きめな音を流し、視聴者を画面にひきつける。

「音楽はもちろん、日常の生活音も、作品の雰囲気づくりには重要と考えています。例えば、梶間家で武内がかけている掃除機の音を大きめに流すことで、武内に不快感のある雪見の気持ちを表したりします。“土曜の夜を眠らせません”そんな思いも込めて、制作しています」(市野プロデューサー)

 点火したガスが燃えさかる音や、飛行機が通りすぎる音など、どんな状況や心情を表現しているのか、想像して見るのもオススメ。撮影は中盤にさしかかり、現場は熱気に満ちている。

「スタートしたばかりのドラマ枠ですが、“土ドラみたいだね”と言われるのを目標にしています。波瀾万丈な生き方の人に“昼ドラみたいな人生だね”というように、土ドラも、何かを象徴して、たとえられるような作品を生み出していきたいと思っています」(市野プロデューサー)