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 現在放送中のドラマ『99・9-刑事専門弁護士-』は、嵐の松本潤が演じる型破りな弁護士の活躍が見どころ。でもこれってドラマだからなの? という疑問を持つ人も多いはず。現役の弁護士2人と元警察官の計3人に業界の詳しい話を聞いてみた。

 ドラマ内では、松本潤を手助けする“パラリーガル”も活躍。一緒に事件現場の聞き込みをしたり、事件に関係する書類を読んで徹夜することもしばしば。いったいパラリーガルとはどんな人たちなのか。

徳原弁護士「ざっくり言うと、弁護士をいろいろとサポートしてくださる職業の方です。特段、資格が必要なわけではなく、性別・年齢関係なくいらっしゃいます。もともとは弁護士志望だった方もいますね。ベテランの方だと、若手弁護士よりも知識が豊富な方もいますよ」

西川弁護士「多少、残業することはありますが、ドラマのようにパラリーガルが徹夜で寝泊まりすることはないです。あくまで従業員なので、労働基準法的にダメですね(笑)。最終準備書面などの大切な書類を作るときは、朝までのこともありますが」

高橋氏「検察官でいうところのパラリーガルは警察です。検察事務官は書類を精査するのが仕事なので、捜査は検察官の指示で警察官がやるものです」

 毎回、拘置所で被疑者の話を聞く接見シーンが登場する。松潤は出身地や生年月日などの一見、関係のなさそうなことを聞き出すことから始めるのだが、現実の弁護士はどんなことを聞くのだろうか。

西川弁護士「出身地は本人が更生するうえで、身元引受人がいるか、就業先があるかに関わってくるので実は大事な情報です」

高橋氏「警察も被疑者調書を取るときは、生い立ちも聞きます。どんな環境で生活を送っていたかで、人間性がわかることもありますから」

徳原弁護士「僕もその人のことについて聞きますね。例えば、高校をやめた人だったら、そのあとは何をしていたのかとか」

西川弁護士「警察での取り調べで何を聞かれているのかも、検察側がどこに焦点をあてているのかを知るために聞きます」

高橋氏「実は、最初の接見がとても大事。一般の方って、初めて逮捕されたときは何が何だかわからない状態なんです。動揺していて、自分にどんな権利があるのかもわからない。だから警察側は、そこで聞きたいことはすべて聞き出そうと思っているんですよ」

西川弁護士「そうですね。最初の接見では、黙秘権のことなどを伝えないといけないので、たとえ取り調べ中でもそれを中断させて連れてきてもらったりします。これは憲法で認められていることなんですよ」

 “事実はひとつしかない”というポリシーを地で行くように、事件現場に足繁く通ったり、被害者の実家を訪れたり、はたまたホームレスと寝食をともにする主人公。でも、ここまでの捜査を弁護士本人がするものなのだろうか。

西川弁護士「大きな事件でなくても現場に行くことはありますね。例えば、交通事故の案件でも現場はどんな状況なのかが重要な場合もあるので、見通しはどうなっているのかなどを直接見に行きます」

高橋氏「資料や証拠を現場へ行って集めるのは基本的に警察官が行います。被疑者の勾留期間は最大で21日間あるのですが、その期間中は警察官がほとんど調べます。その資料を検察官が整合性があるかを見るという形です」

 松本は毎回、料理をしながら事件を頭の中で整理するのがお決まりのパターン。料理とは言わずとも、現役の弁護士たちに何か変わったルーティンはあるのだろうか。

徳原弁護士「僕は筋トレ中にぶつぶつ言いながら事件について考えています(笑)。“こんな法律構成だから”という感じで頭の中を整理していますね」

西川弁護士「事務所の人間が全員帰ったあとに仕事をするときは、ハウスミュージックを大音量で流して仕事しています(笑)。フロア全体に流してテンションを上げることで、作業効率をよくするのが狙いです。ただ、音楽に集中し始めてしまったら、すぐに止めますが」

■弁護士と被疑者の間には強い絆も  

 起訴をされてしまうと、99.9%の確率で有罪になると言われる刑事事件。しかし、0.1%の無罪を勝ち取った被疑者と弁護士との間には、強い絆が生まれているはず。ドラマではその後が描かれないが、現実ではどうなのか。

西川弁護士「一般の方は、のど元過ぎればという部分があるので、連絡をとるということはほとんどありませんね。弁護をしたとはいえ、向こうにとってはどうしても負の記憶でしかないはずですからね」

徳原弁護士「私が以前、担当した少年は暴走行為をして捕まってしまい、保護観察になったのですが、後に大学に合格したと報告してくれました。飛行機の整備士になるのが夢と言っていたので“整備士になったら整備した飛行機に乗せてね”という話をしました」

西川弁護士「いい話だね。まさにドラマみたい(笑)。少年事件だとそういうこともあるかもね」

<プロフィール>

◎徳原聖雨弁護士

 『弁護士法人・響』の福岡オフィス支店長。『HERO』の久利生検事に衝撃を受け法曹界へ。フジテレビ『HERO THE TV』にも出演。福岡県弁護士会所属。

◎西川研一弁護士

 『弁護士法人・響』代表弁護士。東京・大阪・名古屋・福岡に拠点を持つ。多くの弁護団にも所属し、テレビや新聞などメディア出演多数。大阪弁護士会所属。

◎高橋博志氏

 『綜合探偵社TS』の調査員。元警察官という経験を生かし浮気不倫調査、詐欺被害、いじめ問題などさまざまな調査に対応。テレビなどメディア出演多数。