高額なコースには最上級の食材を使っているという事実は、あります。希少性があり珍しい食材も、登場することでしょう。

 そうでなければ強気の価格設定はできないことも、お金持ちは知っています。それでも、「一番安いコース」を選ぶには、理由があるのです。

なぜ、お金持ちは「一番安いコース」を選ぶのか

 「一番安いコース」には、お店の良心が現われます。

9月下旬に発売された『お金持ちはなぜ、靴をピカピカに磨くのか?』著:臼井由妃(朝日新聞出版) ※記事の中で画像をクリックするとAmazonの紹介ページに遷移します
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 高級食材は手間ヒマかけずとも、美味しい料理に仕上げるのは容易です。

 よく言いますでしょう。「素材本来の旨みが引き出されている」「素材が生きている」と。

 もちろん値段に見合う料理に仕上げるシェフの腕は必要ですが、人には「高いものはいい」「高いものを食べられる自分はすごい人」という意識が働きます。

 そうした優越感や征服欲が、「味覚」を鈍くさせることがあるのです。

「高級食材」を使い、「高級食器」で「こちらはお客様のような一流の方にピッタリのコースでございます」というように、うやうやしく供されたら、まずいわけがありません。

 一方、「一番安いコース」では食材のレベルが落ちる分、知恵を使い、美味しくする工夫を凝らす必要があります。シェフの腕が試されるのです。

 また、「来店客を増やしたいという思いから、一番安いコースには採算を度外視した食材を使う店が多い」と、ある一流レストランのオーナーシェフが教えてくださいました。