原発立地県で原発批判がタブーではなくなった理由
それにしても、なぜ原発立地県で“反乱”が相次いだのか。是非はともかく、原発は地域の雇用を生み、地元経済の活性化をうながす側面がある。原発立地県で安易に「原発反対」などと口走ろうものなら、「ヨソ者のあんたに言われたくない」などと猛反発を食らうほどだった。ある意味、原発批判はタブーだった。
政治評論家の浅川博忠氏は「アベノミクスの恩恵が地方に行き届いていないことの表れではないか」と読む。
「新潟の有権者はいずれはアベノミクスのおこぼれが回ってくると期待していただろうけれど、いつまでたっても回ってこない。安倍政治が地方にもたらす経済効果が見えないんでしょう。地方再生は掛け声ばかり、とソッポを向かれてしまったともとれる」(浅川氏)
前出の大谷氏は別の見方を示す。同じ原発立地県でも「鹿児島と新潟は違う」と言う。
「川内原発は九州電力なので鹿児島県民も電気の供給を受けています。しかし、新潟は中部電力か東北電力の管内で東京電力の電気は供給されていません。つまり、福島と同じ構図で、東京をはじめとする首都圏に電気を供給するために原発を動かしているんです。なんで東京のために、新潟県民がリスクを負わなければいけないんだという反発心があるのではないか」(大谷氏)
もうひとつ、忘れてはいけないのが2007年の中越沖地震で原発危機を経験していることだ。柏崎刈羽原発は地震の影響で火災が発生し、微量の放射線漏れがあった。4年後に起きた福島第一原発の事故は他人事ではなかっただろう。
「新潟県内では福島から避難してきた住民も暮らしている。故郷に戻りたくても戻れない隣人の生活に触れ、原発の怖さを身に沁みて感じている人も少なくないと思う」(前出の地元記者)