「会議室で大勢のオジサンに“この子、どうする?”って囲まれて、“顔がおもしろくないから鉄仮面でもかぶせる?”って。その後ロッカーの上に寝かされ、鼻にストローが刺され、あれよあれよという間に石膏で顔の型をとられて。“すごい世界に入ってしまった……”ってア然としました」
『スケバン刑事II』主演が決まったときの状況をこう振り返る南野陽子さん。「おまんら、許さんぜよ!」の名台詞とともに一夜にして人気者に。『楽園のDoor』など楽曲も次々ヒット。ドラマチックな曲調に長い黒髪とロングドレスが印象的だった。
「聖子ちゃんカットにミニスカートで、“水しぶき浴びてギラギラ”している感じが王道でしたから、私は異質だったと思う。生意気かもしれないけど、自分の好きなクラシックやカンツォーネ、ボサノヴァを入れたカセットをディレクターに渡して、こういう曲をやりたいと伝えたりしました」
7枚目のシングル『話しかけたかった』は、どうしても歌いたかった曲。
「初恋どまりの等身大の自分に重ねて歌えたから。振り付けも自作ですが、好きな人を目で追うシーンを表現したのに、プロデューサーに“にらんだでしょ”って言われちゃったなあ(笑)」
当時は10代ながら、プロ根性は人一倍。
「変な噂を立てられたくなくて、男の子のアイドルにも“話しかけるなオーラ”を出してました。周りは100人中99人が恋愛していたし、いま思えば、もったいないことしましたよね! おニャン子クラブのメンバーなんかは休憩中に手をつないで出かけたりしていたの。“女子校のノリ”が可愛かったけれど、それを横目に現場の隅で、ひとり深呼吸していました (笑)」