今から30年前、1986年の新聞にこんな記事がありました。今は50代を超えている「新人類世代」の新入社員に対する、当時の上司の愚痴のようです。
「残業を命じれば断るし、週休二日制は断固守ろうとする。だから、仕事は金曜の夕方までにわれわれ上司が手を貸して片づけさせるしかないんです」(保険会社課長)
「社費留学で海外にやると、帰国したとたん会社をやめてしまうんで、期間を短くしたり、帰国後にノルマを課したりしています」(商社部長)
どうでしょう?とても30年前の記事とは思えないのではないでしょうか。そのまま今の新入社員に対しても同じことが当てはまるような内容です。「最近の若いモンは…」と言っている50代の上司も、彼らが若い時はこんな感じだったわけです。
さらにさかのぼって、今から300年前、江戸時代中期の書物で、「武士道と云うは、死ぬ事と見つけたり」で有名な「葉隠」にも、以下のような記述があります。
「昨今の若者(武士)は、すべてにわたって消極的で、思い切ったことをしない」
「最近の男は、口先の達者さだけで物事を処理し、骨の折れそうなことは避けて通るようになってしまった」
江戸時代でさえも、変わらなかったようです。
「イマドキの若者論」の限界
時代背景や環境、テクノロジーの進歩により、時代によって意識や行動が変化することは当然のことです。決して、世代論そのものは否定しません。ですが、いつまでも世代論に固執して、「イマドキの若者はこうだよね」と無理やりカテゴライズしようとすると、大事なことを見落としてしまう恐れもあります。
確認しようがないのをいいことに、「俺の若い頃はこうだった」という武勇伝を語りたい気持ちはわかりますが、世代によって違いがあるのではなく、基本的には年齢に応じて大体同じ道を通るものなのです。
むしろ、大きく差が出るのは、既婚なのか独身なのかという点。同い年であっても、結婚して子どもを持った男と、ずっと独身を謳歌しているソロ男とでは、価値観も行動意識も根本的に違いますし、お金の使い方も異なります。
生涯未婚率が上がる前と恋愛比率は変わらないのに、どうしてこれほどまでに未婚化が進行したのか。むしろそちらの方を検証していくべきだと思います。それについては、また次回。
荒川和久(あらかわ・かずひさ)◎博報堂ソロ活動系男子研究プロジェクト・リーダー。早稲田大学法学部卒業。博報堂入社後、自動車・飲料・ビール・食品・化粧品・映画・流通・通販・住宅など、幅広い業種の企業プロモーション業務を担当。プランニングだけではなく、キャラクター開発やアンテナショップ、レストラン運営も手掛ける。従来、注目されなかった独身男性生活者に着目し、2014年より「博報堂ソロ男プロジェクト」を立ち上げた。自らも「ソロ男」である。