だからこそ、“戦国の世で、なぜ女性の直虎がそこまで頑張れるのか?”という大義をいかにして描くかが重要。徳川四天王のひとり・本多忠勝が書き残した『史籍雑纂』には、女性が戦場に駆り出されていたことや、秀吉が天下人となる以前の時代の女性は勇ましかったことなどが記されています。

 仮に、最前線には立たずとも直虎が若いころに戦を体験した結果、血なまぐさい男性的な思考にうんざりして、女性特有の現実的な選択を採択してサバイバルしていくというくだりがあれば、直虎がお家存続に東奔西走したという説得力も生まれる。やはり大河ドラマは説得力がないとシラケてしまう。

 なにゆえ“おんな城主”か? そこに重厚感があることを期待します」

<プロフィール>
ほりえ・ひろき◎1977年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒。日本、世界、古代、近代を問わず歴史の持つおもしろさを現代的な視点、軽妙な筆致で取り上げている。綿密な検証と考察、臨場感あふれる描写には定評あり、『乙女の日本史』など乙女シリーズで注目を集める。近著『本当は怖い世界史:いつの世も人間は変わらない』 (王様文庫)が絶賛発売中。

※『週刊女性』2016年12月20日号より