これを成し遂げたマンションに、JR千葉みなと駅のそばにある「ブラウシア」があります。そのマンションでは、50年の修繕計画をもとに修繕積立金を分譲時の2倍とする案を掲げたところ、当初かなりの反対の声が上がったと言います。

 しかし、その一つひとつの声に丁寧に答え、同じ住民である自分たちの声で熱意をもって説明したことで、最終的に90%の賛同を得られたのです。そして、「ブラウシア」は、修繕積立金が分譲時の2倍と高いにもかかわらず、現在中古市場でも非常に人気のマンションで、資産価値も上がっています。

月日がたつほど、おカネで合意できなくなる

 修繕積立金の額の見直しを怠って先延ばしにしていると、最初は安くていいものの、その分後から修繕積立金の額を大幅に上げなければなりません。しかし、高経年マンションでは定年退職後に年金生活する人の割合が多くなり、値上げに対抗がある人が増えます。高経年になればなるほど、おカネは必要になるのに、そのための合意形成は難しくなるのです。

 ですから、早い時期に、将来を見越して修繕積立金の根本的な見直しをして、修繕積立金をしっかり貯めているマンションは安心です。マンション運営に無関心な人や、今だけよければいいという人が多いマンションでは、到底できないことです。

 そして、そういうマンションを新たに購入しようと思う人は、目先の経費の安さでなく、将来の安心を大切に考える人が多いということになります。ですから、年を追うごとに、より維持管理をきちんとしていこうという風土が育ち、いざ改修工事をしようという段階でも、合意形成がしやすくなります。

 最近は、民泊や脱法シェアハウスなど住宅以外の利用で利益を上げようなど、自分で住む以外の目的で購入する人も増えています。そのために、住環境を守るための合意形成に苦慮するマンションもたくさんあります。その点、修繕積立金が高いマンションは、利回りが悪いので、投資目的の人が避けていってくれるというご利益もあります。

 マンションの専有部分をピカピカにリノベーションして購入したら、できれば共用設備も新しく、外観もきれいになってほしいと思うでしょう。しかし、資金に余裕がなく修繕積立金を大幅に上げなければならないようだと、思うような住環境が整わないこともありえます。そういう点でも、中古マンションを購入するときには、マンションにおカネがあるかどうかをチェックすることが重要なのです。

 修繕積立金に余裕があるということは、思わぬ災害に見舞われても、生活環境アップの改修工事の必要が生じても、合意形成もしやすく、迷わず、復旧、改修に取り組めます。おカネがあるということは、未来の保険にも、未来の価値の向上にもつながるのです。

 逆に、たとえ他の条件が魅力的でも、管理組合におカネがない中古マンションは避けたほうがいいと筆者は思います。といっても自分で判断するのは難しいこともあるでしょう。そんなときは、一生ものの買い物ですから、購入前に詳しい人や専門家にアドバイスをもらってもいいかもしれません。