「とにかくみなさんのお役に立つことだけを思って今までやってきたので、こんな事態になり最終的にお客様にご迷惑をかけることになってしまい、本当に申し訳ありません」

 3月27日、国土交通省で記者会見を開いた旅行会社『てるみくらぶ』の山田千賀子社長は、涙ぐみながらこう語った。

 同社はこの日、東京地裁に破産申請をし、手続き開始の決定を受けたのだった。負債総額は約150億円で、そのうちの旅行申し込み約3万6000件(約99億円)に影響が出ることは必至。

旅行代金をすでに支払っている人に全額返金することは不可能です。現在、海外渡航をしている人たちも“航空券が発券できない”“宿泊ホテルで料金を請求された”などと、トラブルが相次いでいます」(全国紙記者)

 高額な海外旅行の代金をすでに支払った人たちに対して山田社長は、

「27日以降に渡航予定の方は、現地のホテルや交通機関などに未払い債務を支払えないため、利用できない可能性が極めて高いです。安全確保の観点から渡航しないことをおすすめします」

 と、無責任すぎる発言。すでに支払いずみの代金については、『JATA(一般社団法人日本旅行業協会)』による「弁済業務保証金制度」で返金手続きが行われるというが、この制度での弁済額は1億2000万円のみ。『てるみくらぶ』に旅行者が支払った額のわずか1・2%にしかすぎない。JATAの広報室に問い合わせてみると、

「弁済金についてのお問い合わせをたくさんいただいております。通信販売という目に見えない形態だったので事前に対策を講じるのは、なかなか難しいと思います」

債務超過は75億

『てるみくらぶ』の経営状態の悪化は数年前から続いていたようで、赤字を黒字に見せかける「粉飾決算」の疑いも出ている。

「提出された破産申立書によると、少なくとも3年前から営業利益が赤字だったのにもかかわらず、黒字と見せかけていた可能性があります。例えば、昨年9月末までの営業利益は約1億5000万円の黒字としていましたが、実際には15億円の赤字。債務超過は75億円にものぼっていました」(前出・全国紙記者)

 まさに“火の車”。しかも、破産手続きをする直前の全国紙で“現金一括キャンペーン”と謳った新聞広告を掲載していたのだ。破綻する間際まで高額な広告費を使って現金を集める姿勢は“詐欺”と言われてもしかたがない。

 '98年に設立された同社は、インターネット販売を得意とする格安旅行会社として成長した。しかし業界内の評判は芳しくなかったようで、

「最初から破綻していると言ってもいいやり方の会社でした。同じ業界の人間から見たら“いつかこうなるだろう”と思われていましたね。

 旅行に行くために頑張って貯金した方々の夢を奪うなんて許せません。山田社長は、“夢を売る”ことが仕事である旅行業界に立ち入ってはいけない人だと思います」

 そう憤りをあらわにするのは山田社長と面識もある旅行業界で働くA氏。山田社長は『てるみくらぶ』の前身である『アイ・トランスポート株式会社』で30年以上も前から旅行業に携わっていたという。

「前の会社でも破綻するような状態で経営されていたんです。薄利多売が方針で、先に代金をもらってから、ほかにお金を回す自転車操業でした。まったく責任感がない人なのです。

 そもそも出発の半年前からお客様に代金をいただくということはありえません。今回にしても、1度請け負ったお客様に対して最後まで責任を果たすべきなのです」(A氏)

 通常は約1か月前までに代金を入金するケースが多く、何か月も前に入金を催促するのは“資金繰りに窮していた”ことを暗示するという。