リスクを抱えてでも多くの役者たちは、ドラマや映画などで演じるキャラクターに沿うように、さまざまな努力を行なっている。
「海外のレッスンなどではこれを“役にアプローチする”といいます。しかし昨今の邦画は製作日数が短く、役者さんもほかの作品とかけ持ちされていることが多い。だから、その役1本になかなかしぼれない方が多いのですが、映画の世界はプロが結集して作品を作り上げるため、中途半端だと浮いてしまうんです」
と語るのは、映画パーソナリティーとして活躍するコトブキツカサ氏。
映画とTBS系でドラマにもなった『世界の中心で、愛をさけぶ』では、当時10代の長澤まさみと綾瀬はるかが、”女の命”とも言える髪を剃り落とし丸刈りにしたことで話題を呼んだ。
「若い女優として肝が据わってますよね。同世代においてほかの役者より1歩上へのぼりました。現場では、彼女たちの意気込みを周囲も感じますから、撮影の士気も上がると思います」(コトブキ氏)
あえてむくんだ顔で撮影
身体の変化ではなく、役柄と同じような生活を送ったのが、映画『苦役列車』で主演した森山未來と、『そこのみにて光輝く』で主演した綾野剛。役作りのために毎日のようにお酒を飲んで過ごしたという。
「森山さんは風呂もない3畳ひと間という環境に身を置いたそうです。綾野さんは撮影中、函館の街で毎晩飲み明かし、あえてむくんだ顔で撮影に臨んでいたといいます」(前出・映画製作スタッフ)
意外なベテラン俳優も、過去に同様の役作りをしていた。
「西田敏行さんの主演映画『敦煌』は全編、中国ロケ。寒くて厳しい現場に住み込んで役作りをしたそうですが、シャワーも出ないような地域。“役を演じるんじゃなくて、役に入っていった感覚でした”と、ご本人がおっしゃっていました」(コトブキ氏)
大ヒットを記録した日本テレビ系ドラマ『家政婦のミタ』では、松嶋菜々子がほかの共演者と仲よくなりすぎないよう、撮影中は会話をせずに楽屋に引きこもっていたそう。
「TBS系ドラマ『カルテット』の悪女役で注目された吉岡里帆さんも、松たか子さんや満島ひかりさんらが仲よくしていても会話に入らないようにしていたそうです」(前出・芸能プロ関係者)
映画『ちはやふる』では競技かるた、『四月は君の嘘』ではバイオリン、『チア☆ダン』ではチアリーディングと、さまざまなスキルを身につけたのは、すべてで主演を務めた広瀬すず。短期間でこれらを習得するだけでもスゴいのだが、彼女の真骨頂はそんなものではない。
「映画『海街diary』では監督と相談して、あえて台本を読まずにその場で演技の仕方を固めたそうです。綾瀬さんや長澤さんという錚々(そうそう)たる先輩たちを前に、その場の空気で役を作り、ほぼアドリブで、コケたらおしまいという環境だったのですが、広瀬さんは当時“今まででいちばん楽しい現場でした!”と言っていて。末恐ろしさを感じましたね」(コトブキ氏)
映画やドラマなど、素敵な作品の裏には、涙ぐましい努力があったのだ──。