「吃音症」は恥ずかしくない!
小倉さんは自らの経験をオープンにすることで、吃音症に悩む人たちを勇気づけたいと、NPO法人全国言友会連絡協議会などで講演活動などを行っている。
「最初に、吃音は治りませんよといきなり言うんです。するとみんな、えーってがっかりするんですが。ただ僕くらいにはなれますって言うと、目がキラキラしてくる。
それと、なんで今ふつうに話しているかというと、それはお金をもらっているからです! と言うとウケるんですが、実際にそんなもんなんですよ」
小倉さんは今でも吃音症を克服してないと話す。さゆりさんやマネージャーと日常の会話をするときは、いつもその癖が出るのだとか。吃音にはさまざまなケースがあって、どう対処すべきかは、それぞれの立場に立たないとわからないのだと言う。
「犬に話しかけているときは吃音はない。ひとり言を言っているときも、歌を歌っているときも……。気持ちの問題もあるのかなと気づいて」
小学生のころ、犬と河原を散歩しながら大きな声で話したり、歌を歌いながら吃音が出にくい声の出し方やコツをつかんでいったという。
「小学校5年の担任の先生が連れて行ってくれたNHK秋田の児童劇団で演劇をしたり人前で話すようになったら、さらに自信がつきました」
その後もDJコンテストやバンドの司会など、積極的にマイクの前に立つ機会を増やしていった。
「講演のとき、つっかえながら質問する人に、“恥ずかしいことじゃないよ”と言うんです。アメリカ人なんて、カッコつけるためにわざとそうやってるじゃないですか? ちょっと考えるときのポーズみたいにね。
それで“あなたの話し方は大丈夫! こういうふうにしてごらんなさい”って言うんですよ。吃音でもいいから自信を持って話しなさい、内容が大事なんだからと。
その後“面接に通りました!”なんてお手紙をもらうと、すごくうれしいですよね」
生涯現役。目標は2020年!
現在、小倉さんは平日の帯番組を持つ司会者の中で最年長となった。そして来月70の年を迎える。
師弟関係にあった大橋巨泉さんは、56歳でセミリタイア宣言し、メインの仕事を降りて、ゴルフや釣りをするなど悠々自適の生活を送っていたが、小倉さんはその師の教えをどう受け止めているのだろう?
「僕も最初は憧れていたんですよ。でもね、あるとき巨泉さんが“セミリタイアは飽きる”って言いだして(笑)。
やっぱり何かやってないとダメなんでしょうね。巨泉さんのそういうのを見ていたから、働けるうちは働いたほうがいいかなぁって。
それと同窓会へ行くとね、同期のやつらがみんな老けちゃってるわけですよ(笑)。それでみんなに“お前は俺たちの星だから頑張ってくれよ。お前がテレビに映っているのを見ると、俺たちも頑張れる気がするからさ”なんてよく言われてね。生涯現役でやろうと思い始めました」
最後に、父の教えを貫いてきた小倉さんに、次なる目標を聞いてみると……。
「とりあえずは2020年のオリンピックまで『とくダネ!』を続けること。そして1964年の東京五輪のときに聖火ランナーをしたので、また聖火を持ちたいってことですかね!」
そう笑顔で答えてくれた。吃音症も下積み時代もがんもすべてをバネにしてきた団塊のトップランナー。再び聖火を手にして何を伝えてくれるのか? その日を待ちたい。
取材・文/森きわこ