「この話をいただいたときは“ラッキー”だと思いました。20代後半からいろんなジャンルの作品をやっていこうとマネージャーさんと話していた最中だったので、これは30代に向けていい経験になるぞと。新しい作品に出るきっかけにもなるかもしれないと、期待しかなかったです

 松坂桃李、29歳。朝ドラ『わろてんか』での藤吉役が記憶に新しいが、ここ数年は、童貞、殺人鬼、ダメ男……など、さまざまな役柄をこなしてきた。そんな松坂が約2年前に満を持して挑んだ舞台がある。それが石田衣良原作の『娼年』――。

 これまでのイメージからは想像もつかない、セックス描写をふんだんに盛り込んだ内容に「ある種、賭けみたいなところはありました」と話す。そして今回、2年の時を経て、ついに映画化!

「舞台で僕も監督も完全燃焼したところだったので、もう1度このテンションに持っていくのが大変でした。『娼年』では身体とのコミュニケーションが大事で、より繊細な芝居を求められて。内容も内容だし、撮影現場も過酷で、メンタルも体力も削られていく日々。正直、現場に行きたくない日もあって、“風邪ひかないかな~”なんて思った日もありました(笑)

 撮影中は自宅に帰らずビジネスホテルに泊まり、完全にスイッチオフにしないようにすることで、厳しい現場を乗り切ったとか。

 劇中では、娼夫としてさまざまな欲望や“傷”を抱えた女性たちと身体を重ねていくが……。

「相手の女性の方とは距離感を大切にして。僕は3週間くらい撮影していましたが、女性たちは長くて2日間。お互いにだんだんと距離を縮めていって、その場で瞬発的な信頼感を生み出していく、それはアクションと似たような感覚でもありました