丸い木のテーブル席が2つと、ソファ席がひとつ。カウンター席は、常連客でにぎわっている。昭和レトロな雰囲気が漂う喫茶店『cafe Canaan』は、角替和枝さんが最も愛した場所だった。

「ご家族でもみえたし、夫婦で演劇の話をするときなんかも、家の中ではなくてうちに来てやるほうがいいって言っていましたね。和枝さんは犬の散歩ついでにテラスに座ったりもしていました」(店主の佐々木研次さん)

 10月27日、64歳の若さで亡くなった角替さん。死因は原発不明がんだった。

夫婦だけど、戦友・親友

 高校卒業後、静岡から上京した彼女が夫の柄本明と出会ったのは、今から41年前のこと。

「柄本さんが当時、つかこうへいさんの劇団にいた角替さんの演技に一目惚れして、自分が主宰する『劇団東京乾電池』に引っ張ったんです。彼が角替さんの自宅に転がり込む形ですぐに同棲が始まりました」(スポーツ紙記者)

 3年間の同棲を経て、26歳で結婚。長女、長男・佑、次男・時生が生まれる。3人の子育てに追われた角替さんだったが、演劇の仕事をやめることはなかった。

「明さんは今でいうイクメンで、何も言わなくてもミルクを作って飲ませたり、おむつを替えたりする人でした。役者としての角替さんに惚れているからこそ、“俳優としての感性を失わないでほしい”という思いがあったそうです。

 角替さんが仕事のときは、掃除も洗濯もお弁当作りだって、なんでもしてあげていたそうですよ」(舞台関係者)