SNSでナイトルーティーンのひとつとして「美肌になるリンパマッサージ」を紹介している川口春奈。このセルフケアであのシャープな顎と小顔、美肌がキープされているのならばぜひとも真似したいと思う世の女性も多いのでは。
ゴリゴリと音が聞こえてきそうな強さで、鎖骨、首、頭部とダイアミックにマッサージを行っているが、顔は「めんどくさい」という理由であまりマッサージはしないそう。
あくまでリンパに重きをおいたマッサージが目的のようだが、「顔の強いマッサージは余計なシワを作ってしまう原因ともなりえるので、セルフではあまりルーティン化させないのが正解」とは、鍼灸師であり美容と健康のスペシャリストの船水隆広さん。
「新聞は少し折っただけでも深い折り目がつきますよね。でも水で濡らすと折っても折り目が残らないように、乾燥していると肌にも折り目、つまりシワの跡が残りやすい状態なのです」
特に老化で肌が乾燥しがちな状態になると、少しの刺激でもシワの原因になりやすくなる。
リンパマッサージにありがちな誤解
そもそもリンパとは体中をめぐる血液から出てきた組織で、毛細血管から出た液体成分のうち、再吸収されずに残った組織液(組織間液)のこと。
「リンパ液は、身体の中に入った細菌やウイルス、がん細胞などを廃棄するために、リンパ管に運ぶ役割もあります。リンパ管はリンパ液から運ばれてきた老廃物を集めて運ぶ下水管にあたる器官といえる存在です」(船水隆広さん、以下同)
つまり、リンパが正常な流れをキープすることは健康な身体を保つことにおいて非常に重要。
「またリンパ管の途中の合流地点にあるリンパ節は、浄水場のようにリンパ液を浄化する働きがあります。リンパ節にはリンパ球や白血球の仲間である免疫細胞が集まっており、リンパ液の中の細菌やウイルス感染細胞などの有害物質を攻撃、破壊してくれるため、リンパ節を通過したリンパ液はきれいな液体となって流れていくのです」
リンパ液の流れが滞り、リンパ管がつまると、老廃物が体内にたまりやすくなり、病気の悪化はもちろん、むくみ、肌のくすみなどさまざまな悪影響が起こる。
このリンパの流れをよくし、リンパ管のつまりを回避しておくことは健康、美容にも非常に重要なのだ。
しかし、リンパケアが正しく理解されていないことも多い、と船水さんは語る。
「そもそも医療の現場でも施術が行われる“リンパドレナージュ”とマッサージ、指圧が全部混ざってしまっている自己流セルフケアをしている人が非常に多いですね」
本来、リンパ液の流れは筋肉の収縮、弛緩によって促され、血液においての心臓のようなポンプ機能はない。したがって、スピードは一定ではなくゆっくりと流れる。
「静脈と一緒でリンパ液は寝ている間が一番よく流れます。重力がなくなり、巡りやすくなるのと、寝返りなどをすることでさらに流れがよくなります」
だが、加齢によって筋肉の量も減り、また寝ている間の寝返りが少なくなってくるとリンパの流れは鈍化する。
「年をとるごとに、外部からのリンパへの刺激を与えてあげることが重要になります。それが、老化を防ぎ、また免疫を高めることにもつながります」
この刺激はあくまでもリンパ液の流れをよくするための刺激なので、さする程度でいい。ここで強くこすったり、指圧をしてしまうとリンパ壁を傷つける原因にもなる。コリをほぐすための筋肉へのアプローチであれば問題ないが、首回り、鎖骨といったリンパ液が集まる需要な部位に過度な圧力や摩擦をあたえないことが大切。
「リンパ管は血液のように循環しておらず、一方通行なので流れる方向さえ間違わなければ、皮膚の上からさする、なでるだけで十分です。若いうちはいいと思いますが、どんどん皮膚も薄くなってくるので、余計な負担をかけないためにも、さする程度の力加減を意識しましょう」