目次
Page 1
ー 着替えない、入浴しないは初期症状の可能性
Page 2
ー 「年だから」で見逃されることも早めの投薬治療で“最悪”を防止
Page 3
ー 身体の痛みを訴えるのは老人性うつのサインかも!?
Page 4
ー 老人性うつは薬で治る、予防は楽観すること
Page 5
ー 老人性うつを予防する6つの習慣

「皆さん、年をとると『認知症になりたくない』とおっしゃいますよね。でも、長年、老年医療に携わった精神科医の私からすると、幸せな老後を過ごすために絶対避けたいのは『老人性うつ』なんです」

着替えない、入浴しないは初期症状の可能性

 そう話すのは、高齢者の脳の老化にも詳しい精神科医の和田秀樹先生だ。

 老人性うつとは65歳以上の高齢者がかかるうつの通称で、うつ病のひとつに分類される。アメリカでは65歳以上の1割に、何らかのうつ病性障害があるという研究も。厚生労働省の調査でも、女性のうつ病患者数のピークは30代だけでなく70代にもある。

「このうつ病が怖いのは人によって症状がさまざまで、しかも本人が自覚しにくいところ。最悪は死にいたる病のため、一般的にいわれる“うつは心の風邪”なんかではなく“心のがん”だと思っています」(和田先生、以下同)

 注意したいのは、認知症老人性うつの初期症状がよく似ていることだ。物忘れや注意力、集中力がなくなるなど、同じような認知機能の低下がみられる。

 家族が認知症だと思って認知症外来へ連れていき、そこで老人性うつが判明せずに悪化してしまうケースもある。認知症外来を受診する患者の5人に1人は老人性うつといわれている。

老人性うつに詳しい精神科医でないと見過ごしてしまうことも少なくありません。家族や身近な人が『ちょっと変だな』と思ったとき、うつの可能性も頭の隅に置いておいてほしいですね」

 認知症はゆっくり進行するが、老人性うつはさまざまな症状が短期間に出てくる。

「着替えなくなった、お風呂に入らないなど、いつもと違うことが一度に出てきます」

 また、物忘れに対する自覚症状も異なる。

認知症の場合は“忘れたことを忘れる”。例えば『朝食に何を食べたっけ?』ではなく食べたこと自体を覚えてないんです。老人性うつの場合は物忘れの自覚があり、『認知症ではないか』と不安に陥ったりします」

老人性うつと認知症の違い
老人性うつと認知症の違い