「長野は元気な高齢者が多いところ。私も負けられません」
そう話す江森けさ子さん(82)は松本市内の自然豊かなエリアで「峠茶屋訪問看護ステーション」の管理者をしている。自身も訪問看護師として毎日、走りまわっている。
週5日、訪問看護師として働く82歳の女性
訪問看護師とは、在宅で療養生活を送る人の家を訪問し、主治医の指示のもと医療処置や看護を行う仕事だ。
「安心して暮らせるよう、健康状態のチェックや、薬の管理などをしています。今、担当する利用者さんは3、4人。医師と一緒に訪問することも」(江森さん、以下同)
また、私はこの訪問看護ステーションの管理者でもあるため、初めて訪問看護を利用するお宅に行き、説明する役割も担っている。
「週5日事務所に出勤し、8時半から17時半まで働いています。訪問先は減りましたが、申請書類作りなどの書類作りや手続きが多いのが、いちばん大変……。やっぱり現場が好きなんですよ」
江森さんは、今は松本市に編入された四賀村で生まれ育った。18歳で准看護師となり、23歳で結婚。転勤族の夫とともに移り住みながら看護師を続け、32歳で看護師資格を取得。静岡県内の看護専門学校で23年間教員を務めた。
「定年退職後は、夫と地元に戻って晴耕雨読の生活をするのが夢だったんです。でも、Uターンしてみたら高齢者が元気で輝いてる。地域を支える活動をしたいと、高齢者を介護することを思い立ちました」
夫を巻き込み、2003年にデイサービスを行う宅老所「峠茶屋」を開所。名称には、人生の坂を歩み続けてきた高齢者に、お茶を飲んで一服してもらいたいという思いを込めた。6年後、認知症患者を抱えたご家庭からの相談が増えたことから、グループホームも開設する。
「基準よりスタッフを多く配置し、人との交流を重視しています。テレビは置かず、認知症患者さんの個人史に向き合いながら記憶や言葉を引き出したり、思い出の歌をみんなで歌ったり。寝たきりにさせない工夫をしています」