目次
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ー ヒントがない! 理事長の仕事内容
Page 2
ー 住人同士の騒音トラブルの顛末は
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ー 防犯カメラがあっても堂々とルール違反
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ー 修繕積立金が3倍に。紛糾する住人説明会

 富裕層の住まいの象徴といえば、思い浮かぶのがタワーマンション。上層階の見事な眺望をはじめ、充実した共用施設や、強固なセキュリティーといったハイグレードな設備に、憧れを抱く人も多い。

 しかし、豪華といえども、しょせんは集合住宅。ひとたび住人になれば、管理組合への加入が義務づけられていたり、一軒家同士のご近所さん以上のルールのもとで暮らさなければならなかったりと、それなりの負荷はあるもの。

 そのうえ、一般的に100戸以上の家庭の集合体なわけだから、それをまとめる立場の苦労たるや、いかばかりか……。

 そんな、憧れのタワマン生活を手に入れたものの、思いがけず管理組合の理事長になってしまったのが竹中信勝さんだ。悲喜こもごもな実体験をもとに、このたび、そのものずばり『タワマン理事長』という書籍を出版した。

 竹中さんに、元タワマン理事長ならではのとんでもエピソードを聞いた。

ヒントがない! 理事長の仕事内容

 憧れだったタワマン高層階に住まいを持った竹中さん。夢の住居を手に入れたものの、穏やかな日々はほどなく終わりを告げる。

 抽選によって、マンション管理組合の理事長に任命されてしまったのだ。当時のことを、こう振り返る。

タワマンの元理事長・竹中信勝さん
タワマンの元理事長・竹中信勝さん

マンションを買った者の宿命として、いつかは役員の順番が回ってくるもの。わかっていたはずなのに、まさに青天の霹靂(へきれき)といった思いでした」(竹中さん、以下同)

 広告代理店に勤める竹中さんにとって、マンション管理は未知の領域。まずは歴代の理事長たちの業務を参考にしようと管理人に尋ねると、鍵を一つ渡された。 

過去の資料がある棚の鍵、ということでした。扉を開けて愕然(がくぜん)としました。ファイリングされた議事録が、ズラッと何冊も並んでいるだけなんです。必要な情報を、この膨大な紙の資料の中から探し出さないといけないのか、と。

 しかも、業務のマニュアルらしきものはなく、かつ議事内容の書き記し方に統一性もないので、参考にはなりませんでした」