タレントとして活動するほか、SMAPやHKT48などのアーティストの振付師としても活躍するKABA.ちゃんに、LGBTとして生きることについて伺った。
「“いつから女性になりたかったんですか?”そうよく聞かれますが、実際に意識したことはありません。小さいころから、“将来は、お母さんみたいなお嫁さんになる!”と言っていたくらいだったので、自分を女性だと信じて疑っていなかったのだと思います。小学校のときから女友達に囲まれ、“カー子”って呼ばれていました。高学年にもなると、“いざというときのために、ナプキンは持ち歩いていたほうがいいよ”と、生理が始まった子から言われたときには“私も気をつけなきゃ”って思っていましたね」
しかし成長期を迎えて声が変わり、体毛が濃くなり、筋肉がつき……。身体が変化していくとともに“自分は女性ではない”という現実を突きつけられる。
「恐ろしく、うとましく感じました。自分が男性ならば、男性に惹かれる自分は“ゲイ”なのかもしれないとも思いました。でも、それも違和感ばかり。男性として男性に惹かれるのではなく、私は女性として男性に惹かれている……。これは性同一性障害やトランスジェンダーではないか、と認識したのは、’98 年くらいでしょうか。当時はインターネットも手軽ではなく、情報を得られなかったんです」
性適合手術へ向けた準備の真っただ中だというKABA.ちゃん。事前にカウンセリングを何度も受け、ホルモン治療を最低1年は続けているという。
「その後、診断書をもらって手術する病院を決め、手術の予約をして……と、とにかく時間がかかります。リスクも大きく、人によっては精神のバランスを崩して自殺することもあるんです。女性になりたいと思い続けていた私でも決意に至るまでそうとう悩みました。そんなときに背中を押してくれたのが、姉。彼女は私生活を削って仕事を頑張ったのにリストラされ、さらに重い病気も見つかったんです。だからこそ“あなたは後悔のないように生きて”と言ってくれました。“私たちが何を言われてもいいから、手術しなよ”と家族が言ってくれたのも、本当にうれしかった。今までの40数年間、男性として生きてきました。性適合手術をするには年齢的に遅いほうだけれど、人生の折り返し地点。残りの人生、どこまで女性らしくなれるか挑戦したいんです。老いに負けるのが先かもしれませんけどね(笑い)」
自分のセクシュアリティーやいまの状態を友達に話すのはOKなほうだという。
「“手術は進んでいる?”“わからないから教えて”と聞かれるのも、もちろん平気。よく知らない人からの、別の生き物を見るような視線には身構えますね。“男同士のセックスって、尻洗うんだろ?”なんて言われると、“マイノリティー相手だと、下品なことを平気で言ってもいいと思っているんだろう”と、とても不快。こういう人たちに説明をしたところで彼らのいいように意味がねじ曲げられそうで、話す気もなくなります」
オネエタレントが花盛りの昨今、テレビの世界から“LGBTでも楽しいよ”というサインを若い世代に伝えられるのは、いいことだと思っていると語る。
「ただ、テレビだからこそのサービス精神は理解してほしい。実際に出会ったLGBTの人に、おもしろさやオネエキャラを求めないでくださいね。テレビを通じて仲よくなったミッツ・マングローブさんやマツコ・デラックスさんには、いろいろな相談をしましたが、治療を始めてからは“楽しそうだね”と言われます。私が男性として女性が好きだったら悩むこともなかったけれど、こういう人たちとも出会えなかった。苦しいけど、素敵な友達や家族、自分で得た知識や経験は、人生において何らかの身になっているような気がします」