「エッ全国一律じゃなかったの!?」。
とんでもない。国内の水道料金は一律どころか地域ごとの格差が広がるばかり。公共料金なのに地域によって支払い料金に差があるのだという。そんななか最近、料金改定に踏み切った、あるいは踏み切る予定の自治体の声を集めてみた。
北海道美唄市のケース。
「10月から33年ぶりに料金を改定し、平均約30%値上げします。水道事業で蓄えた3億円は、’13年には不良債務が発生するまでになってしまいました。人口は毎年約500人ずつ、世帯にすると毎年100世帯ほど少なくなっています。水道料金収入が、’05年から年間平均1000万円落ちました。今後5年はこのまま維持予定ですが、人口が増えるとは考えられず、大企業が進出してくる計画もありません。給水収益はさらに落ちると考えられ、5年後以降のこともまた考えていかなければなりません」(水道課)
静岡県東伊豆町のケース。
「東日本大震災以降、観光業が低迷し、旅館が以前ほどは水を使わなくなっています。人口も減りました。電気でポンプアップして、山を越えて供給しているので、電気代が上がり打撃を受けています。町民と5回の料金審議会を設け、今年7月から平均約25%アップの改定に至りました」
埼玉県秩父市のケース。
「今年1月請求分から、平均約17.5%料金を改定しました。県内でいちばん古い浄水場が老朽化し、漏水のため供給前に30%ほどの水が失われていました。更新費用をまかなうために、値上げを決定しました。これは今後5年の設定で、その後は状況によってまた見直します。また現在、周辺の4自治体と、水道事業の合併を進めています」
それぞれの自治体が、それぞれの事情を抱え、料金改定を行い、経営の健全化を進めている。全国の人口が減少し続ける中、目の前の改定は、小手先だけの対処法にならないのか。
今月7日、水道事業基盤強化方策検討会を立ち上げた厚生労働省水道局は、
「まだ水道事業に関して対策を練る段階にはないんです」
と現時点では有効な打開策がないことを認め、
「人口減少によって、水道料金の収入が少なくなってきています。施設の更新を進めるには、料金をきちんと設定してもらわなければなりません。今後、こちらも具体的な方策を議論していきますが、水道事業は公共企業として各自治体でやっていってほしい」
と自治体まかせにしたい気持ちをにじませる。
水ジャーナリストの橋本淳司さんは、水の専門家の視点から、改善ポイントを挙げる。
「まずは事業体の合併があります。施設を縮小することで無駄なコストが省けます。国も統合した事業体に助成金を出すなど合併を促しています。次に事業体ごとにコストを削減することです。地下水を利用できる地域は、最大限に利用すること。地方には良質な地下水が存在することも多いので、確認してみてほしい。大分県豊後高田市黒土地区は、人口200人強で限界集落ギリギリくらいの地区ですが、県や市の助成を受け、浄水能力1日8トンの小規模飲料供給施設を、自分たちで作りました。総工費は700万円。1世帯当たりの負担は5万円ですみ、2011年から稼働しています」
設備を“延命”させる手もあるという。