s-takeru0510-1

 映画『世界から猫が消えたなら』(5月14日、全国ロードショー)で主演を務めた佐藤健。原作は、日本のみならず中国・韓国・台湾でも出版され、累計120万部を超すベストセラー。

「僕のキャリアにとって最大の勝負作になったと思います。自分の芝居が、この映画の成功に直接つながるというのはわかっていました。そういう意味では、今までの作品の中でもすごく特別です」

 愛猫・キャベツと暮らす郵便配達員の“僕”が、ある日突然、余命宣告をされる。そして目の前に現れた自分によく似た姿をした“悪魔”に、ある取引をもちかけられるところから物語は始まる。健は、もともと原作小説を呼んでいた。

「“実写化されたらどうなんだろう”とは思っていましたが、年齢設定が30代前半だったのでその役をやるのは自分じゃないなと考えていた気がします。残念だなと」

 オファーを受けたときに感じたのは驚きとうれしさ。同時に“ピンチとチャンスが一緒に来た”というプレッシャーも。

「“僕”と“悪魔”の2役を演じることが大変だったというのももちろんあるのですが、特に“悪魔”は難しかったです。要は、実際にはいないキャラクターじゃないですか。だから正解がないし、何をしても正解になりうる。

 僕は、バリバリの特殊メイクするでしょ! って思っていたのですが、監督には引かれちゃいました(笑)。最終的に“僕”よりも指が1.5センチだけ長い悪魔ができあがりました」

 何か1つ世界からものを消すことと引き換えに、1日の命をもらえるとしたら……。1つ消すごとに、大切な人たちとの思い出まで消えてしまうことに気づきながらも電話、映画、時計を順番に消した“僕”は、最後に、猫を消す選択を強いられる。

「もっとも共感できたのは、“猫に対する思い”です。実家で猫を飼っていたので、ひとり暮らしを始めるまでの17年間、ずっとそばに猫がいたんです。たぶん、飼っていた人にしかわからない気持ちってあると思う。

 僕が今もしも余命宣告をされたら、ですか? うまく想像できないけど、きっと、大切な仲間たちとおいしいご飯を食べて、おいしいお酒を飲んで、しゃべりたいって思うでしょうね」

撮影/高梨俊浩