当事者が語る症状
■嗅覚・視覚・触覚が過敏なちあきさん(40代女性)の場合
私は音、匂いに特定の苦手なものがありますが、とても過敏なのは視覚と触覚だと思います。中でも視覚は、駅のタッチパネル式券売機で切符が買えないので、みどりの窓口に並びます。画面の向こうから夜の工事現場のライトが自分に向かって直撃しているように感じられて、まぶしいよりも痛いです。
パソコンの画面は明るさを最低レベルに設定。大量のテレビや照明が並ぶ家電ショップは、なるべく避けます。カラフルなテキストを頑張って読もうとすると、目が“はじいて(視覚の刺激が強すぎて)”見えません。
カラフルなポスターやチラシが視界に入ると気になって、目が回って気持ちが悪くなってしまいます。特定のテキスト・フォント・色の組み合わせで作られた資料は、文字が逃げて読めないんです。苦手な刺激にさらされ続けると、体調まで悪くなって集中できなくなり、ひどくなると冷や汗や寒けまでして、とてもしんどいです。
■聴覚・触覚が過敏なO・Tさん(30代男性・ASD)の場合
視覚や聴覚も過敏だけれど、どうにもならないと感じるのは触覚ですね。まず毛糸の服は一切ダメ。スーツの裏地もガマンができないから年中、裏地のない夏物を着ています。それに、足の親指のつま先に物が触れる感触に耐えられず、社内では「足がムレやすいから」とサンダルばき。社外の仕事相手に会うときだけ、つま先に当たらない大きな革靴をはきます。
あとは身体全体、人に触られるのが極端に苦手。ゾワゾワした圧迫感があって恐怖を感じます。手足に多量の汗をかいて、お腹のあたりまで違和感が起こってくる。手に液体やジェルがつくのも嫌なので、自分の汗が不快で、あまりに解放されないと失神します。人にぶつかるのが怖くて、電車に乗らず移動は車、狭い店には入りません。人がそばにいるだけでソワソワして手が震え、誰かが近くを通るたびにビクッとする。
子どものころ恋愛マンガに憧れたけど、実際に彼女ができたら手も握れず、キスもできない。ベッドインのときも自分に触れないように伝え、ボクは上にシャツを着たまま。歴代の彼女に怒られましたね。でも、不思議と今の彼女だけはどこを触られても大丈夫。すごく安心できる相手だからでしょうか。大事にしたいです。
■嗅覚が過敏なN・Hさん(30代男性)の場合
嗅覚の過敏さに気づいたのは大人になって“感覚過敏”の存在を知ってから。それが普通だと思って育ってしまった。
隣の部屋の人の香水が匂う。隣の隣の部屋で、から揚げを食べているのがわかる。月に1度、「お母さんから血の匂いがする」なんてこともずっと気がかりでした。触覚過敏もあるのでマスクもダメ、鼻栓もできずつらかった。薬を服用するようになってからは、少し治まったのでよかったです。
■痛覚が鈍麻なA・Tさん(40代女性・ADHD)の場合
気づけばアザができていたり、手足から血が出ていたりすることはしょっちゅう。誰かに指摘されるまで自分ではわからないことがほとんどです。先日も、腕が赤く腫れていると夫に言われ、単にぶつけたのかと思い放っておいたら、パンパンに腫れ上がって……。病院で、毒を持つ虫に刺されたのだろうと言われました。