さらに、得意な洋裁技術を生かして、ご近所から針仕事を引き受ける松下。ついでにメイコとようこのモンペや野良着にも、ポケットやアップリケをつけてあげたのだが……。

 松下の目の前では喜んで、気に入ったフリ。ところが、陰で「こんなもん恥ずかしくて着れるかよ」とディスりまくる。そうそう、そうでなくっちゃ! 

 昭和のあの時代は、そういう陰険ないびりがデフォルトだったよねぇ。表と裏を使いわける昭和20年代の女たちが、まざまざと蘇る。いや、その時代に生きてないけどさ、なんとなくこういう感じだったんだろうなあというリアリティがあったんだよね。

 陰口叩いていた割に、松下が商売を成功させると、コロッと態度が変わるのもおかしくてねぇ。メイコ、最後は松下にかなり影響されたせいか、真っ赤な洋服着ていたし。変わり身の早さというか日和見というか、そこもとてもリアルだったわ。

 ちなみに、陰険ないびりが流行った後は、あからさまな嫌がらせ(バレエシューズに画鋲、的な)が横行した1980年代、面と向かって歯向かう元気な女が出始めた90年代、いびられた怨みを晴らすべく、反撃に出る女が増えた2000年代。

 そして今はSNSに書き込んで密かに、かつ卑怯に復讐する2010年代……。ドラマの中で女たちのいびりは、ちょっとずつ進化してきたのだ。進化じゃなくて、退化とも。要はいつの世もオンナアラートは鳴り続けるわけですよ。

女の自立を認めない・受け入れない男たち

 さて、もうひとつのアラートは「俺様」な男たちである。徹子が生きた時代は男尊女卑がスタンダード(つうか、今も脈々と続ける人々も大勢いて、それはそれで薄気味悪いのだが)。女性の人権を軽視する男たちが多くてねぇ。そりゃあアラート鳴るわけだよ。

 まず、徹子の父親だ。山本耕史演じる父は、男尊女卑の権化として描かれている。徹子の就職に反対し、「女性の幸せは自立ではない」と説く。さらに、松下の叔母である八木亜希子が自立した姿を「寂しい一人暮らし」とけなす。

 徹子を騙して、見合いさせたりもする。考え方や言葉がいちいち昭和の悪しき父親像で、イライラするのだが、実にうまいと思う。そう、この父親は徹子が「自立と働く女のプライド」に目覚めるための必要悪なのだ。