寒い日の朝・ストレス・激しい運動に注意

 生きている限り、老化は避けて通れない。血管も同様だ。しかし病気やケアについての知識を身につけ実践していけば、リスクを大きく減らすことはできる。

血管の老化が進む危険因子は5つ。喫煙、高血圧、高血糖、脂質異常、肥満で、ひとつの因子が加わるごとに、健康な人の3倍も動脈硬化の危険度が高まるとされています。危険因子をひとつでも減らせば、それだけ大きくリスクを減らせるということです」

 動脈硬化を防ぐには、これらのリスクを減らすこと、血管にいい食生活と運動をすることがカギを握る。予防と同時に、血管を傷つけない生活をすることが重要になってくるのだ。

高血糖、高コレステロール、高尿酸、そして冬は特に高血圧に気をつけたいところ。いずれも血管を傷つける原因になりますから」

 冬の朝から午前中にかけては、心筋梗塞や脳卒中リスクが高くなる時間帯。

「前述のとおり、人間の身体は、夜間に血圧が下がり、早朝には上がるようにできています。夜は眠り身体を休めるために、日中は活動するために血圧の日内変動が起こります。朝、誰でも血圧が上がりますが、高血圧の人、血圧の上がり方が急激な人は心筋梗塞や脳卒中のリスク大です」

 朝起きてすぐ家の外へ新聞を取りにいくのは命取り。暖かい家の中から寒い外に出ると、血管が縮まり血圧が急激に上がってしまうからだ。

「さらに朝は、脱水も重なって血管が詰まりやすくなっています。まず、ベッドや布団からすぐに出ず、中で手足をモゾモゾ動かして軽い運動をしましょう。その後、ホットドリンクを飲みます」

 冷たい水ではなく、温めることがポイント。

「ストレスは血圧を上げるので、冬は特に注意が必要です。鶴ひろみさんの事故を前述しましたが、運転も人間にとってストレス。寒い日に車の中に入ったらエンジンだけでなく、身体も温まってから運転を始めましょう。身体のアイドリングも必要です」

 また、冬は室内で適度な運動をするのがベスト。屋外での急激な運動は控えて、と池谷先生。

年末年始に食べすぎて太ったから、と激しい運動をするのはやめておきましょう。早朝は最も危険です」

 過ごし方によって、血管は健康にも不健康にもなる。リスクを減らし、血圧の上がる行動を避け、血管のためにいい食事と運動をすることが重要だ。

〈この人に聞きました〉
池谷敏郎先生◎池谷医院院長。内科・循環器専門医。わかりやすい解説が好評で、各メディアで活躍。『血管を強くして突然死を防ぐ!』(PHP文庫)など著書多数。