「障害があるから大変とか、障害がなければよかったって思ったことがないんです」。そうあっけらかんと語る、コラムニスト・伊是名(いぜな)夏子さん(35)。沖縄から単身上京、ひとり暮らし、ボランティア、海外留学、結婚、出産……。持ち前の明るさとバイタリティーで文字どおりどんな“障害”も乗り越えてきた、バリアフリー人生とは?
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身長100センチ。体重20キロ。
伊是名夏子さんに初めて会ったとき、あまりの小ささに息をのんだ。生まれつき骨形成不全症という障害があり、手足はきゃしゃで身体も細い。2人も子どもを産んだとは、にわかには信じられなかったほどだ。
「子どもが好きで、子育てしたかったから」
ちょっと高めの可愛らしい声。明るい口調でさらりと言うが、骨が弱く骨折しやすいため、普通に生活していても危険と隣り合わせだ。
「昨年の冬、寒いから布団をかぶって寝ていたら、当時3歳の息子が下にママの足があるってわからないでタタタッと歩いてきて、バキッとなっちゃって。骨折まではしなくても、ヒビが入ったりすることは、よくあります」
これまで何度も骨折・手術を繰り返したため、手や足は変形している。重い頭を支える背骨はくの字に湾曲しており、歩くことはできない。耳の中の骨がもろいため右耳は難聴で聞こえず、左耳も補聴器を使用している。
そんな夏子さんが母になるまでには、一体どれだけのハードルがあったのか──。
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夏子さんが生まれたのは沖縄本島北部の病院。父の伊是名進さん(73)は夏子さんが生まれたときのことを、今でも忘れられないという。
「ずーっと泣いていてひと晩泣きやまなかったんです。翌朝調べたら、両足2本骨折していて、頭蓋骨もとても薄くて。レントゲン写真を見せてもらったら、僕はちょっと気が遠くなりましたね。本土から来た有名な先生に診てもらって病名がわかったんです」