同じ失敗を繰り返してしまう
とある禅寺にて。ビジネスパーソン・A氏と、マインドフルネスの専門家である「先生」の会話
先生:おや、どうしました? お悩みのようですね。
A氏:実はこの間、私が取引先に提案したイベントが失敗して、赤字を出してしまって。上司に一任された企画で、大勢の社員を巻き込んで進行させていたし、取引先も期待してくれていた。それなのに、こんな結果になってしまって。未だにまわりからの視線が痛いし、なかなか立ち直れないんです。
先生:そうでしたか、大変でしたね……。では、その失敗は忘れましょうか。
A氏:えっ?
先生:スッパリと忘れましょう。
事実と感情を切り分ける
失敗を振り返れば、「ここで間違えなければ」「あのときああしていれば」といった後悔が出てくるのは当然のこと。でも気をつけなくてはならないのは、後悔にはネガティブな「感情」と、本当に修正すべきだった「事実」の2種類があるということです。
失敗から立ち直れない人は、これを混ぜこぜにして解釈してしまっているもの。犯してしまった過ちという事実が、あるところから、いきすぎたネガティブ感情による思い込みにすり替わっている。
過去の失敗に引きずられないためには、ある程度から先のネガティブな感情は自分で作り出していると気づくこと― すなわち、「感情」 と「事実」を切り分けることが必要なのです。そこで、余計な「感情」は捨て去って、本当に間違っていた「事実」を修正すればよいのです。
失敗は脳に刷り込まれる
これは、「前は失敗したけれど、今回は成功するかもしれないから頑張ろう!」と、無理やり自分を鼓舞しろ、ということではありません。大切なのは「ネガティブな思い込みを手放す」ということです。
「失敗しよう!」と思って失敗する人はいませんが、「失敗するだろう」と予測してそのとおりに失敗する人は大勢いるんです。なぜか失敗するものばかり選択してしまう。これは、たとえば「自分につらくあたるパートナーとの関係に悩んでいた人が、なぜか次も同じようなパートナーを選んでしまいがち」という話と同じです。
人間の頭には、「一 度引き受けた役割をもう一度引き受ける」という習性が刷り込まれている。そういう形でしか人と人との関係を再現できない。自分の頭にないシーンは演じることが できないのです。
では、どうすれば負の連鎖を断ち切れるのか。まずは、そういった連鎖の中にいる、という事実に気づくことが大切です。