血液中のアミノ酸濃度バランスは、古くから肝臓疾患や自己免疫疾患にかかった場合に崩れることが知られていた。ところが、測定技術が進歩し大量のデータをとれるようになり、さまざまながん患者でも、同様の現象が起こることがわかった。
「4年間かけて健康な人を含め約2万検体のデータを蓄積して解析し、その結果に基づいた新しいがんのスクリーニング検査として実用化しました」
受診するにあたり注意しなければならない点がある。
「ランクC=がん」ということではなく、あくまでもがんの疑いがある人を発見するスクリーニング検査なのだ。がんを確定するには詳しい検査が必要になる。
「現在、例えば胃がんでは、日本人の約1000人に1人の割合でがんが見つかるといわれています。しかし、そのすべてに内視鏡検査をするより、100人に1人の割合にまで絞り込んでから検査を行ったほうが効率的です。ランクCが出た人は、この検査でリスクが高いほうに絞り込まれた人、という考え方です」
AICSの特徴は、早期発見につながるということだ。同社の研究結果によると、がんを正しく診断できる精度は1cm以下の肺がんでは胸部X線検査より高く、ステージ1の大腸がんと胃がんの場合も、腫瘍マーカーより高かった。
「がんが小さいほどX線や腫瘍マーカーより見つける確率が高いということになります。早期発見できるかどうかで、その後のQOL(生活の質)に大きな差が出てきます」
昨年加わった2種類の検査でわかるのは、“4年以内に糖尿病になるリスク”と“血液中の必須・準必須アミノ酸のレベル”だ。これらを総合的に評価し、タイプ別の結果が出る。
「検査後、結果に則した生活改善の冊子をお渡ししています。生活改善を行うと数値がよくなることがあり、1年に1回、モニタリング指標的に使うのもいいと思います」
近年、年齢とともに筋肉が減少していくサルコペニアという状態が寝たきりや認知症などのリスクとして問題視されている。筋肉の維持にはタンパク質が欠かせないがアミノ酸レベルが低いとタンパク質不足の可能性がある。病気予防に早すぎるということはない。日ごろからチェックを!
血液&唾液でがんのリスクがわかる
がんリスクを調べる検査で、臨床応用されているものはほかにもある。その1つがマイクロRNAという物質を検出する方法だ。人間の細胞の中には遺伝情報が入った設計図の役割をするDNAがある。DNAから情報を読み取り、タンパク質の合成に関与するのがRNAで、その仲間にマイクロRNAという微少な物質がある。がんにかかると特異的なマイクロRNAが発現することが知られており、血中から検出してリスクを判定する。これは、すい臓がん、乳がんが対象だ。
唾液による検出方法は、ポリアミン類という物質の濃度から判定する。唾液中には500種類以上の物質があり、がんにかかるとポリアミン類は上昇することが知られている。こちらは大腸がん、すい臓がん、若年性乳がん、肺がん、口腔がんを調べることができる。