「“今まで俺に嘘をついていたのか! お前ら、今すぐ捨ててやるからな!”って、やくざみたいな口調で、すごく怒鳴られた。付き合う前のことだし、別に私が何かをしたわけでもないのに、なんでそんなことで怒られなきゃいけないんだろうと思ったんです。でも、相手は100キロ以上の巨漢だし、絶対に力ではかなわない。怖くて、震えながら、“ごめんなさい、ごめんなさい……”ととにかく謝ったんです。
ライターが壊れたことにも怒っていて、“お前、新しいライター取ってこいやぁ!! さっさと走れや! ごらぁぁ!!”と、お尻をものすごい力で何回も蹴られた。熱にうなされながら、フラフラの状態で机の引き出しにある新しいライターを取りに行かされました。それからですね、DVが始まったのは」
DVを相談できる相手もいなくなり、周囲から孤立
麻里子さんは、その一件以降、大輔が異様に嫉妬深い性格だと悟って、猛烈に怖くなった。そのため、男性の友人はもちろん、学校の同級生やママ友、そして、自分の実家とも連絡を極力取らないようにした。実際、麻里子さんが友達や親と会っていることを知ると、機嫌が悪くなり、殴られるようになったからだ。
麻里子さんは、DVを相談できる相手もいなくなり、ますます周囲から孤立するようになった。
麻里子さんが買い物などで外出すると、「どこに行っていたのか」と毎回問い詰められる。正直に「買い物」と言うと、「お前、俺に隠れてなにしてるか、わからんなっ!!」と怒鳴られて、頭を平手で殴られた。それ以降、恐怖心に襲われた麻里子さんは、車で場所を移動するたびに、大輔に報告するようにした。
「とにかく束縛がすごいんです。行動は逐一、全て連絡してましたね。じゃなきゃ猛烈に怒られるから。普通の家庭なら、買い物に行ってくるよ、とかで済むと思うんですが、移動するたびに報告しなきゃいけないんです。例えば、今からコンビニに行く、ドラッグストアに行く、家に帰ったら帰宅したと、事細かく行動を全て報告していました。かろうじて自分の母とは会っていたのですが、それもスーパーの駐車場で待ち合わせして、車の中で会うようにしてました」
しかし、いくら大輔の逆鱗(げきりん)に触れないように行動しても、暴力はやまない。エアコンの温度設定がなってない、ごはんがまずい、注いだお茶が少ない、起きたら毛布が掛かっていない、どれもきっかけはささいなことで、全て暴力を振るうためのこじつけだった――。それが始まると、結果的には、どんな理由であれ、怒鳴られて、蹴られ、殴られるのだ。