2018年サッカーロシアW杯日本代表、最年長の守護神は、家族への大きな感謝を胸に、フランス・メスのピッチで淡々と最終調整を進めていた。「成長」をストイックに求め続けてきた金剛不壊のGK川島が今、強い覚悟の裏に秘める思いとは──。(週刊女性2018年5月29日号掲載)

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 冷たい雨に見舞われた2018年3月27日のベルギー・リエージュ。4年間、この町で暮らし、チーム本拠地のスタジアムで悲喜こもごもを味わってきた守護神・川島永嗣(現フランス1部・メス)は、慣れ親しんだ場所に戻り、日本代表の一員としてウクライナに挑んでいた。

 6月に迫った’18年ロシアワールドカップ(W杯)本大会に出場する最終メンバー23人発表前ラストのテストマッチで、重要度は高かった。が、日本はロシアへの切符を逃した東欧の強豪に主導権を握られ、劣勢を強いられた。川島は最後尾から大声を出し、仲間を力強く鼓舞したが、前半21分に1点目を奪われる。相手のロングシュートが味方DFの頭に当たり、角度が変わったことで彼は微動だにできず、ゴールネットを揺らされたのだ。

 気持ちを切り替え、巻き返しを図ろうとするも、日本は攻め手を欠く。そして後半24分には致命的な2点目を奪われる。右サイドを完全に破られ、ゴール前の守備組織が崩れた末の失点だった。これも川島には対応のしようがなかった。やるべき仕事は遂行し、ノーミスで90分を戦ったが、スコアは0―2。「敗戦」という結果しか残らない。それが彼らGKの厳しさである。

「練習で100本シュートを止めても、試合で1本決められたら評価されない。“チームを勝たせられなかった”とGKのせいにされる。まさに理不尽な役割なんです。でも逆に1本止めることで、悪い流れを変えてチームを勝利に導くこともできる。それは100の努力が報われたと思える瞬間。僕はそのためにGKを続けています」

 悔しさの中に希望を見いだそうと、日々もがいている。

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 ウクライナ戦の敗戦が致命傷となり、日本代表はチームを3年間率いたヴァイッド・ハリルホジッチ監督の電撃解任という異例の事態に直面した。目下、代表最年長35歳のGKは少しでもチームをよくしようと得意のフランス語を駆使し、頑固な老将に臆せず意見を言い、意思疎通を試みてきた。それだけ正義感が強い分、自らの力不足を痛感したことだろう。信頼を寄せてくれたハリル監督に対する自責の念も大きかった。

 それでも、自身3度目のW杯は目前に迫っている。立ち止まっている暇はないのだ。

「西野(朗=新監督)さんが指揮する体制に変わろうと、僕ら選手がやるべきことは変わらない。相手より力が劣っていようが、一方的に攻められる不細工なサッカーを強いられようが、とにかく勝つ姿勢にこだわる。僕はそういう戦いをしたいです」

 代表82試合を数える百戦錬磨の男は、強い覚悟を示した。