“業界あるある”満載で、共感します
1940年代の華やかなハリウッドを舞台に、成功したいと奮闘する若き作家の姿を、おしゃれにコミカルに描くブロードウェイ・ミュージカル『シティ・オブ・エンジェルズ』。この作品で主役の作家、スタインを演じるのが柿澤勇人さんだ。
『サンセット大通り』では脚本家、『メリリー・ウィ・ロール・アロング』や『タイトル・オブ・ショウ』では作曲家役と、バックステージものミュージカルの経験が豊富な柿澤さん。「バックステージものは共感しやすいんです」と、作品の魅力を語る。
「スタインは“売れたい”、“売れるためにはどうしたらいいか”と、ずーっと考えているわけですよ(笑)。他人を利用するのか、権力を利用するのか。一筋縄ではいかないし、邪魔者が入ったり、思いどおりにいかなかったり、嫌なことがあって“やめちゃおうか”と思ったりすることは、この業界にいれば身近にある。設定としては時代も国も違いますけど、共感できるんですよね。“業界あるある”満載で、ものを作っていこうという人たちの情熱や熱さみたいなものも、自分たちと重なりますしね」
この作品がユニークなのは、スタインと表裏一体の主役がもうひとり存在するところ。スタインが書く作品世界の主人公、探偵ストーンだ。この“分身”のような存在を演じるのが、山田孝之さんなのだ。
「売れない脚本家のスタインが、自分の理想として描いているのがストーンです。いつかハリウッド映画のエンドロールに自分の名前が載ることを夢みるスタインですが、絡んでくる女性たちには弱いから、つい寝ちゃって不倫関係になっちゃったり(笑)。
欠点も多い、すごく人間臭い男で。書いているうちに現実なのか虚構なのか、混乱してわからなくなってしまう。“ああ、もうダメだ”ってなったときに、山田くん演じる作中の主人公が僕に話しかけてくるんです。現実的には、そのふたりが触れあうことなんてできませんよね。でも舞台ならできるわけで、そこが面白くなりそうだと思います。現実世界と脚本世界を行ったり来たりして、ほかの役者の方たちは二役を演じますので、みなさんがどんなふうに演じ分けるのかも楽しみですね」