平成30年7月豪雨で発生した7つの連続滝状災害 (1)土石流による洪水氾濫 (2)砂防ダムの決壊に伴う洪水氾濫 (3)ため池の決壊 (4)橋脚の上流での水面上昇による氾濫 (5)治水ダムの放流による氾濫 (6)背水現象(バックウオーター)による氾濫 (7)排水施設の能力不足による氾濫
また、もうひとつは、愛媛県の野村ダムの放流による氾濫である。
「これが、(5)の治水ダムの放流による氾濫です。ダムが洪水で満水状態になると、上流から流入する洪水をそのまま下流に流す必要がある。ダムの施設が破壊されるからです。
ところが、この操作を実施すると、下流住民は洪水氾濫が起こることを必ずしも知らない場合もある。西日本豪雨では、愛媛県・肱川の野村ダムが放流したために、西予市野村町では浸水被害で5人が亡くなっています」
実際に避難した人はたったの0・3%だった
危険が差し迫っているとき、どのようにして住民を避難させるか。
西日本豪雨では、その難しさが浮き彫りになった。
例えば、最も被害が大きかった広島県では、217万人に避難指示や勧告が出されたが、実際に避難した人は6000人あまり。わずか0・3%にすぎなかったのだ。
「しかも犠牲になった人の大半が高齢者。逃げれば助かったというケースも多かった。だからといって、情報だけで避難の緊急性を伝えるのは無理だと思います。倉敷消防署には1000件を超える救出依頼があったそうですが、とても対応できるわけがない。
しかし、氾濫が起こる前に消防車を出して、町のなかを走り回って“避難指示が出てますから、早く逃げてください!”と避難を訴えていたら、そんな数にはならなかったのでは? 警察も消防も災害が起こってからでなければ動きませんが、危険が予想される場合、予防のためにも出動するべきでしょう」
洪水や土砂災害の危険箇所を示す『ハザードマップ』の活用法も、さらに検討すべきだろう。
「岡山県倉敷市真備町地区の場合、被害の範囲はハザードマップとほとんど重なっていました。だからといって“逃げないほうが悪い”とは言えない。ハザードマップを作ってただ配るだけで終わらせないで、それをもとにして、町内会で講習会をやるべきなんです」