古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第57回は樋口卓治が担当します。
大坂なおみ 様
今回、私が勝手に表彰するのはプロテニスプレーヤーの大坂なおみさんである。
日曜、なぜか早朝に目が覚めた。テレビのリモコンをいじっているとテニスをやっていた。そっか、全米オープンで大坂なおみが決勝に進んだんだ……、それくらいの認識だった。
スタジアムの外観が映る。USTAビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニス・センター。あ、ビリー・ジーン・キングといえば、映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』でエマ・ストーンが演じた主人公の名前だ。
そんな感じでボーッと見ていたが、これはただ事ではないとわかってくる。
遠いニューヨークの地、たった一人で大坂なおみが闘っているのだ。
会場を埋め尽くす観客のほとんどがセリーナ・ウィリアムズを応援。20000対1くらいのアウェー。
スマッシュが決まるとセリーナはライオンのごとく吠える。会場が湧く。大坂なおみはうつむき加減でじっと耐える。
逆に大坂なおみが決めると野太いどよめき。スーパーウルトラブーイング。
よくもまあ、超アウェーで試合できるな、と目をみはる。実況で20歳と聞き、目が点になる。
コロシアムでライオンと闘うグラディエーターのようなタフさだ。この光景を見ると、自分の緊張なんて、ミジンコの前で歌を歌うくらいちんけなものに思える。
コートに立っていられるだけでも褒めてあげたいのに、大坂なおみはセリーナの大砲のようなショットを果敢に打ち返す。足を深く曲げたしなやかなバックハンド。ボールはセリーナの脇を抜けていく。あ、決まった! アニメみたいだ!
互角、いやそれ以上に少女は攻めまくる。え、もしかして勝っちゃうかも。どんどん試合に引き込まれていく。