『負担付き遺贈』の活用を

 はたして、この問題に解決の糸口はあるのか。

「親が亡くなった後、きょうだいがいるなら、できるだけ面倒を見てほしいというのが親の本音。ところが親代わりになってといった頼み方をしても感情を逆なでするばかり。月に1度様子を見に行ってほしい、役所に行けないので一緒に行ってほしいなど、具体的にしてほしいことを決めておくことも大切」(浜田さん)

 そういった具体的なことを遺言書の中で明記する『負担付き遺贈』という方法もあるという。

「遺言書の中で何かを強制するような文言は、法的に効力が認められません。月に1度様子を見に行く、役所に同行するの2つを実行するなら、◯万円相続すると明記する。もし履行されない場合は“お金を返せ”と、ほかの相続人が訴えを起こすことができます」

 と話すのは司法書士の大石裕樹さん。しかし相続する財産がある家庭は恵まれている。相続する財産もなく持ち家もない場合は、ことはさらに重大である。

「生活費は切り詰めることができても、住まいの値段は切り詰められません。もちろん、きょうだいで支えていかれる家族もいらっしゃいますが、家賃補助などの取り組みも国や自治体は考えていくべき」(浜田さん)

 きょうだいの多かった時代は長子が問題を調整し分担することもできたが、いまや少子化が進み1人当たりの負担は増すばかり。未婚率も上がっており『きょうだいリスク』は深刻さを増すばかりだ。


〈PROFILE〉
浜田裕也さん
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー。『働けない子どものお金を考える会』のメンバーで、ひきこもりやニートなどの子どもを抱える家庭の相談を受けている

大石裕樹さん
司法書士。全国に日本有数の拠点を持ち、弁護士、税理士、社会保険労務士といった、あらゆる専門家が所属している『ジェネシスグループ』の代表