岡田が乗り越えた3つのプレッシャー
岡田将生が役者としてひと皮むけるのではないかと期待されているのが本作。岡田自身も制作発表のコメントで、役のハードルの高さに、引き受けられるのか迷ったと語り、「しかし、僕が演じさせていただく八雲という人物に、どんどん興味が湧き演じてみたい、やりたいと思う気持ちが強くなり、この役と心中したいと思いました」と、意気込みと覚悟を見せた。
原作は累計200万部を突破し、魅力的なキャラクターと骨太なストーリーで第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞などの漫画賞を総なめにし、若者たちを中心に落語ブームを巻き起こした雲田はるこの同名漫画。脚本は連続テレビ小説『マッサン』の羽原大介が担当している。
物語は戦前から戦後、平成まで長く活躍した、前座名「菊比古」が真打に昇進し、その後、落語の大名跡「八雲」を襲名する落語家の一代記。
名人を演じる岡田はセリフだけでなく、落語も覚えなければならないため、役を引き受けるのを躊躇した気持ちはよくわかると出水有三プロデューサー。
「テキストで噺を覚え、その後、柳家喬太郎師匠に指導を受けています。10回放送の中で『死神』『明烏』などプロの落語家も苦労する大ネタをいくつも披露するので、撮影の合間もずっと練習しています。その姿は芸を追い求める菊比古とも重なり、岡田さんがどれだけこの役に真摯に取り組んでいるかが伝わってきます。ひいき目ではなく、喬太郎師匠も“二ツ目の実力はある!”と褒めていますよ」(出水P、以下同)
さらに、10代から70代の老け役までを演じる。
「長い人生を描くには、若いときと壮年のときを、ふたりの役者が分担することが多いのですが、今回は前座時代の菊比古から名人と呼ばれるようになった八雲まで、人生を重ねてきた人間を見事に演じ切っています。カッコいい好青年の岡田さんの老け役にも注目していただきたい」
八雲というキャラクターは難しい役どころ。
「繊細で神経質な性格で、親友の初太郎(助六)と、その妻で若いころの自分を支えてくれたみよ吉を謎の事故死で亡くすという心の闇を抱えている。“受け”の芝居のため発散したいと思う役者もいるなかで、岡田さんはそこを抑えてよく演じていると感心しています」