症状が急激に悪化していた

 手足が震える、動きが遅くなる、筋肉が硬くなるといった症状に苦しむパーキンソン病は、1000人に1~1・5人の割合で発症する病気で、国の難病にも指定されている。

 1か月前に修志さんの姿を見たという70代の女性は、

「手すりにつかまりながらトイレに行こうとしていたけれど、転びそうになりながら、やっとだった……。ご飯も何時間もかけて食べる状況だと、かよ子さんから聞きました」

 と症状の悪化を伝える。

 前出の男性住民は、

「犬の散歩はしとったけど、5~6年前からうまく歩けずすり足で、背中が曲がって左前に傾くような感じでね」

 この夏、修志さんは要介護1の介護認定を受けた。

 80代の近隣女性は、そのころに、かよ子容疑者と交わした会話を覚えている。

「かよ子さんは“施設に通えるようになってよかった”と話していました。だから“あんたもちっとは楽になるな”って言ったんだけど……。同じ時期に、階段の上り下りが大変になったから、2階にあった息子の部屋を1階に移したとも言っていました。夏以降、症状が急激に悪くなったのかもしれん」

 夏以降、症状が悪化したことは、後に登場するかよ子容疑者の夫の証言が裏づける。

 かよ子容疑者はこの女性に「介護は大変」と漏らしたり、「あの子が元気になってくれたらええんやけどな……」と心の奥底を吐露することもあったという。事件の数日前、道ですれ違った際には、

「顔が疲れていたから“しんどそうやけど大丈夫か”と声をかけたら“いけるいける(=大丈夫)”と努めて明るく振る舞う感じでな……」

かよ子容疑者は「最高の人で最高の母親」

 だが、重い負担はかよ子容疑者を確実に蝕んでいた。元来は明るく面倒見がよく、その人柄は、近所の誰しもが一目置く存在だった。

「本当にいい人。明るくて人の悪口も言わんし、困っている人、地域の人の面倒をよく見ていた」(80代女性)

「息子さんの介護や仕事を一生懸命やっていて、本当にいい人なんです。最高の人です。私は友達やけんね、実際にこの目で見ていますが、あれだけの介護はできません。最高の母親です」(80代女性)

「あのおうちはな、この地域の中でも一番しっかりしたおうちでな、かよ子さんは私も頼りにしとったんよ。とっても元気がいい方でね。本当に不憫でならない」(60代女性)