そして地上波のテレビとネット配信が、日常生活の中でどんどん混ざり合っていく現代において、隠れたエアポケットとなってしまっているのが、まさかの『J-POP』と『歌番組』。
先にあげたAbemaTVはもちろんなのですが、実はテレビ各局が近年始めた地上波コンテンツのネット再配信。
また、似たような形でリアルタイム配信をしているニコニコ生放送などのネット配信は、J-POPアーティストの出演する歌番組には全くといっていいほど、対応できていないのが事実です。
もちろん、インターネットでは同時に、ライブ中継やミュージックビデオなど、クオリティが高くアーティストのこだわりも詰まった完成度の高い音楽コンテンツが、いつでも気軽に視聴できるという事情もあります。
ただ思うのは、あまりにも地上波とネット配信の対応がはっきり食い違いすぎていることで起きている、ある懸念。
それは、両者を行き来する若者たちが、テレビコンテンツの高齢化の狭間に落ちたまま、本来ならば自分たちの方にも向いていたはずのJ-POP作品に気軽に触れるきっかけを、今も少しずつ、失い続けているのかもしれないということ。
そして、視聴者が一斉にその場限りの緊張と味わいを共有することのできる、いわゆるあの“テレビサイズのステージ”が、地上波季節特番だけのレアものになっていく……。
それはそれでJ-POPの明日にも、そしてテレビの未来にも、なんだかものすごくもったいないような気がしてしまうのです。
コンテンツのネット配信は、本来ならば居住地の壁も年代の壁も乗り越えられる、すべての視聴者にとってのステキな可能性を秘めた、そんな存在です。
それだけに、ネット配信とJ-POP系歌番組の今も続いているすれ違いは、どうにかならないのでしょうか。
いち音楽ファンとしては、変わりゆくテレビの前で、どこかやきもきしています。
乗田綾子(のりた・あやこ)◎フリーライター。1983年生まれ。神奈川県横浜市出身、15歳から北海道に移住。筆名・小娘で、2012年にブログ『小娘のつれづれ』をスタートし、アイドルや音楽を中心に執筆。現在はフリーライターとして著書『SMAPと、とあるファンの物語』(双葉社)を出版している他、雑誌『月刊エンタメ』『EX大衆』『CDジャーナル』などでも執筆。Twitter/ @drifter_2181