例えばだけど、誰かを追っていて転んだ場所にウンコが落ちていて、そこに顔からベチャッと倒れこんだヤツがいるとするでしょ? 人をいじめるようなヤツは、「お前のせいで顔にウンコついちゃったじゃないっ!」って責任をなすりつけてくるわけよ。

 でも、それって追いかけられた人や周りのせいじゃなくて、追いかけて転んだヤツの自業自得じゃない?

 そりゃ顔にウンコもつけば誰かを殺してやりたくなる気持ちも分かるけど、カッとなったその一瞬で人生を棒に振ることだってある『短気は損気』とはよく言ったものなのよ。

 標的なんか簡単。いじめる人間はむしゃくしゃすると、自分より弱い立場だと判断した相手や、己にとって面白くない人間を選別して傷つけて、強くなった気になるの。短絡的で幼稚な考えの持ち主よ。

 アタシから言わせれば、いじめられてる本人よりいじめている加害者の方が、哀れで悲壮感も満載だわ。誰よりも高い山に登ったつもりでいるのよ? その程度の高さの山で。寒いったらありゃしないわよ。

 それでも、イジメってこの世から消えないのよね。

加害者の理解のあり方で景色が変わる

 だったら、アメリカみたいに過去犯罪歴のある人の住所を公開するとか、あるいは本人じゃなくて親や近親者の名前とかを学校、会社で公開してやればいいと思わない?

「〇月〇日〇〇君が〇組の〇〇君をいじめました。5時限目はいじめた〇〇君のお母さんから、体育館でみなさんにお話があるので、5分前には集合してください」みたいな。

 悪いことをする側って基本的に自分のことは棚にあげちゃっているから、多少責められても、「ごめんなさい」だの「反省してます」だの、その場しのぎの定型文で何だかんだ事が済んじゃってるんじゃない? でも、自分のせいで身内が晒されるのは、どんな人だって嫌なはずよ。

 もしかしたら、今度はそれがきっかけで加害者やその家族がいじめの対象になるかもしれないし、学校や会社に来ることさえ困難になるかもしれない。だけど、そのくらいのことをしてしまったんだと思い知り、代償を支払ういい機会なのよ。

 これはさすがにやりすぎって言われるかしら。

 でも、加害者の理解のあり方によっては明るいスクールライフも取り戻せるはずよ。過激かもしれないけれど、まさしく学校でしか教えてもらえない、大切な学習だと思う。

 やまない雨はない。自分次第で景色は変わるの。

 しかしながら、生きる者の痛みを知ることって、アタシたち人間はとても苦手なのかもしれないわね。アタシたちは、食べられる事を知らないから……。終わり方がホラーっぽくてごめんなさい。


《PROFILE》
アンジェリカ
愛知県在住、“名古屋のカリスマ”とうたわれるドラァグクイーン。テレビ番組『月曜から夜ふかし』や『行列のできる法律相談所』(ともに日本テレビ系)でその美貌と毒舌ぶりを披露して人気に。地上波のほかラジオ番組、各種イベントへの出演や雑誌でのコラム執筆などマイペースにお仕事中。
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