『いだてん』第1回完成披露試写会にて

 NHK大河ドラマ『いだてん』の視聴率下落が続いていて、第6話ではついにふた桁を切り、9.9%まで落ちてしまった。ひと桁への陥落は、大河史上“最速”なのだという。

 制作サイドはさぞかし頭を痛めているのだろう。ストーリーがわかりにくいことも低視聴率の原因と考えたのか、まだ7話までしか放送されていないにも関わらず、異例のダイジェスト版が放送された。

 さらに、一部週刊誌によれば、視聴率回復のために、オリンピックのメダリストをキャスティングするなどといった施策を練っているという。たしかに一時的な数字上昇は見込めるかもしれない。だが、根本的な解決策にはならないのではないか。

企画そのものが失敗だった可能性

 かつて強力な裏番組がなかった、日曜20時は大河ドラマの“天下”だった。

 平均視聴率20%以上は当たり前、30%を超えるもの、中には40%に迫るものもあった。しかし、このような時代でも、中村梅之助演じる大村益次郎が主人公だった『花神』('77)や、日野富子を三田佳子が熱演した『花の乱』('94)は視聴率が上がらなかった。

 名前を聞いてもその人物像がすぐに浮かばないような、マイナーな主人公を取り上げると、視聴者が離れてしまうことを学習したのではなかったのか……。

 しかし、なかには橋田壽賀子脚本の『いのち』('86)という、近現代史を描いたドラマでありながら、平均視聴率が29.3%と高い数字を叩き出したという事例もある。それは同作が“歴史上の人物がひとりも登場しない”という異色作ゆえに、「大河ドラマとしてではなく、よくできた現代ドラマ」として視聴者を惹きつけたからにほかならない。しかし、これは例外中の例外ではないだろうか。

 たとえば主人公が戦国武将や幕末の偉人なら、大小さまざまな有名な事件に遭遇するわけで、そこが山場となる。視聴者もそこに至るまで過程をかたずをのみながら見守り、感情移入ができる。

 『いだてん』の主人公も歴史上の人物に変わりはないが、皆が知っているような歴史的な出来事があまりに少ない。となると、企画そのものが、失敗だったと言えなくもないが、それでは身もふたもない話になってしまう……。

 NHKも視聴率低下に対策を打っているようだが、その内情はというと、

NHKの番組というのは視聴率が低くても、民放のように打ち切りになったり、スポンサーが撤退したりする心配はありません。今までだって、視聴率が低い大河はありましたが、責任をとって左遷されたスタッフがいたなんて話は聞いたことないです」(前出・民放テレビ局幹部)

 それでも「視聴率」がなにかと注目されてしまうHNK大河。民放各局とは事情は違えど、数字の行方が気になるところだ。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。