Vol.5 斎藤佑樹
「週刊女性さんに嫌な印象は持ってないですよ(笑)。今日は、当時の話をたくさん? いいっすね〜」
斎藤佑樹はノリよく、愉快そうに笑った。
'06年夏の甲子園決勝。延長15回でも決着がつかず、引き分け・再試合となった早稲田実業vs駒大苫小牧。田中将大との壮絶な投げ合いの末、早稲田実業が初の栄冠に輝いた。間違いなく、平成の高校野球史に残る名勝負だ。
これが甲子園か!
「野球を始めたのは小学1年生のとき。兄の影響です。甲子園を意識し始めたのは、小学校4年生のとき。
松坂大輔さんが横浜高校で優勝した('98年)のを見て、“やっぱり、松坂さんってすごい!”と思ったのがきっかけですね」
中学時代は、群馬県大会準優勝、関東大会ベスト8。地元の太田高校に進もうと受験勉強をしていたとき、早実からスポーツ推薦の声がかかり、進学を決めた。甲子園が夢から目標に変わったのは、
「高校1年生のとき。メンバーに恵まれたのがいちばんですね。僕らの代は、スポーツ推薦組だけじゃなく、中等部からの内部進学や一般入試からも、いい選手が入ってきていたので」
2年秋の都大会で優勝し、春の選抜に出場する。
「感動的でしたね。“これが甲子園か!”と。相手どうこうではなく、自分がどういうプレーをできるのか。楽しみでもありましたし、不安でもありました。
春はベスト8でしたが、“もっと行けたな”という思いはあった。ただ、そのためには何かが噛み合わないといけないし、このままじゃダメだとも思っていました」
そして迎えた夏。“行ける”という手ごたえや自信は、初戦ではまだなかった。
「最初に自信をつけたのは、2回戦の大阪桐蔭戦。(現在のチームメートの)中田翔と戦って、11-2で勝って。そこから“もしかしたら、行ける”と。僕だけの力じゃなく、チームに気運があったというか、本当に噛み合った。
もし、僕のワンマンチームだったら、絶対に無理だった。チームメートのレベルが高いと実感しました」
投球中に尻ポケットからタオルハンカチを取り出して、汗をふく……。それまでは汗と泥にまみれるのが当然の高校野球において、斎藤のその姿は斬新だった。早稲田という名門校のブランドや端正な顔立ちも手伝って、大会途中から“ハンカチ王子”と呼ばれるように。