最大のポイントは「医療があること」
もうひとつの特徴が商店街の上に建設されたマンションだ。開発前には、この商店街の生活者は75人。高齢者ばかりだった。それが現在、600人になった。
「街が目指しているのは“医・食・住”がそろったコンパクトシティなんです。居住者はみんな郊外へと移ってしまったのですが、高齢化が進むと車の運転などができなくなるうえ、家族に負担がかかるからと外に出なくなります。
でも、商店街に暮らしていれば、散歩がてらに買い物もできるし、友達と食事することも苦にならない。そして、住居のあるこの商店街の最大のポイントは医療があることなんです」(古川さん)
C地区には、『美術館北通り診療所』がある。診療科目は、内科から美容皮膚科まで幅広い。さらに今年1月には、マンションの下のフロアに総合メディカルセンターといえる『丸亀町クリニック』が開業した。
ここは各種のリハビリにも対応している。真新しいクリニックは、まるでホテルのロビーかおしゃれなカフェのようなインテリアで、とても医療施設という感じはない。
豊永慎二院長が言う。
「商店街や近郊に住んでいる方のかかりつけ医という存在でありたいですね。街づくりの一環として医療があるという発想もとても面白いと思います。上のマンションに住んでおられる方は、病院の上の自宅が病室と同じですから、安心していただけると思います」
シャッター商店街の一途をたどっていた丸亀町商店街は、なぜ奇跡を起こすことができたのだろうか。古川理事長はこう語る。
「それは、商店街が最もにぎわっていた'88年、開町400年祭でのことでした。当時はバブルの絶頂期。そんなときに先代の理事長が“うちの商店街は持って15年、早ければ10年”と言い出したんです。
まだ若かった僕らは”まさか”と本気ではとらえなかった。ところが、その予想はピタリと当たったのです」